夫のいない間に
 不意討ちの質問に、思わず酒を吹きそうになった。

 「……知ってたの?」

 「知ってましたよ、気付かれてないと思ってるのは本人達だけ。周りはそういう雰囲気には敏感なんですよ。伊吹さんとの別れが原因で会社を辞めたって
 俺は認識してます」

 
 それは、違う。

 小規模の営業所の事務員というのは、一人だけ配置されてる場合が多い。

 だからこそ、そのオフィスの華であるし、いくら仕事が出来ても、経営者が男である以上、若さを求められるようになってくる。

 言葉ではなくても、そういう雰囲気や態度、遠回りな嫌がらせは、呑気な私でも気が付いていた。

 「私は、ただ ″ 卒業 ″したのよ」

  会社からも。
  不倫からも。

 「そうなんですか、じゃあ、今は吉岡さんは恋はしてないんですか?」

  井戸端さんのその質問には、確信を持って頷いた。

  この数年、私は、枯れた、ただの主婦だった。


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