夫のいない間に
 やっぱり、気が付くよね。

 「出張に行ってるんです。今回は長くて……」

 なるべく表情を変えないように嘘をついた。

 「あら、そう。大変ね。どちらまで?」

 けれど、 嘘をつくのは得意じゃないから、スムーズには繋がらない。

  「えーと……横浜の方に……」

  たしか、あっちにも支店があったはず。

  「大企業に勤めてると色んな所に行くのね」

  「……」

 正確に言うと、大企業の子会社だ。

 結婚してから、夫の会社は不景気の度にリストラがあった。
 既婚者であっても、長年勤務していた真面目な社員であっても、会社にとっての必要性を見いだされなかった人達は容赦なく切られた。

 それでも、夫は今も残っている。きっと、仕事が出来るし、会社にとっては重要な人材なんだろう。
 その自負と、自由に使えるお金で、夫は年々傲慢になっていった。……と思う。

 「来月は町内の運動会があるから、ぜひ御主人に綱引きにでも参加してほしいわ」




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