夫のいない間に
 班長さんがやって来ると、呼び鈴に反応してマキロンがしつこく吠えた。

 「しっ」

  ちゃんと部屋の戸を閉めて玄関に向かったのに、

 「おやおや、マキロンちゃん! 久しぶりねぇ!」

  それを鼻で押し開けて、こちらに走り出てきてしまった。

 「パパとお散歩行ってないから、運動不足なんじゃないの?」

 班長さんの皺の深い手が、適当にマキロンを撫でていた。

  パパ……?
  貴士のこと?

 どうやら、ごくごくたまに行っていた夫の散歩に、この班長さんは遭遇していたらしい。


 「私が連れて行ってるので、大丈夫です」

  ちょっムッとして、罰金を払う。
  だいだい、いつも、何でもそうなる。
  家の草むしりは私がしてるのに、三年に一度、夫が庭木の剪定をすると、いつも庭の手入れをしてくれる ″いい夫 ″として、ご近所に認知されてしまう。
  車の洗車も、私の車なんて洗ってくれた事もないのに、十年に一度の気まぐれで、夫がついでにホースで私の車にも水をかけると、″二台も洗ってくれる優しい御主人 ″と、評判になるのだ。

 「ねぇ、ところで御主人、最近、ずっと車置いてるけど、ご病気か何かなの? 姿も見かけないし」



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