夫のいない間に
 匂いの根源を突き止めた。
 パソコンラックの下に、ビニール袋があり、それに一つだけミカンが入っていたのだ。

 カビの緑色から白へ変色し、水分は全く無くなり、それは、まるで野球ボールみたいに固くなっていた。

 一体、いつの?
 今は5月なのよ?
 床にあった軍手をはめて掴み、居間のゴミ箱に投げ入れると、マキロンがミカンを追いかけた。
 犬はボール遊びが大好きだ。

 「マキロン! だめ! それ食べたら死ぬかもよ!」

  マキロンがひっくり返す前にゴミ箱を漁り、拾い上げて生ゴミ入れに捨て直した。


 が、それでも夫の書斎からは、まだミカンの香りが残っている。

 腐ったミカンからは殆ど匂わなかったのに。

 長い日数をかけて、部屋に染み付いたのかもしれない。
 この時は、そんな風に思っただけだった。







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