夫のいない間に
 雨足が落ち着いて、曇り空に微かに夕陽が見えた頃、息子が帰宅してきた。
 珍しく遊びに行かないようだ。

 「お帰り、丁度良かった。マキロン、まだ散歩に行けてないの」

  自身の痛む膝を指差して、散歩をお願いすると、健二は途端に嫌な顔をした。

 「理名に頼めよ。もとはといえば、あいつが欲しがった犬じゃん。俺、明日から検定だし」

 「……あ、そう」

 検定だと言われると、それ以上は頼めなくて、私は理名を待ちつつ夕食の支度をした。

 【ご飯いらない】の連絡をよこさなかった娘も早めに帰宅してきた。

 外に出たい欲求が爆発したマキロンが、理名の足にまとわりついた。

 「ちょ、毛つくじゃん、何さかってんの?」

 子犬の頃は、まるで縫いぐるみのように可愛がっていたのに、大きくなると気まぐれで遊ぶ程度になった娘。

 それでも、マキロンにとってはキョウダイみたいな存在なのか、ボールをくわえて転がしては、またくわえ、いじらしく要求していた。
 料理する手を止めて、その様子を見守る。
 キャッチボールを独りでやる犬。
 哀れだ。

 「あはは、一人で遊べてんじゃん、賢い」

  それをシカトして風呂に入ろうとする理名を

 「理名! たまには散歩に行きなさい!」


  つい、大きな声で呼び止めてしまった。






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