夫のいない間に
 外は、隣家の庭から溢れんばかりの紫陽花が顔を出していた。
紫色と赤紫色のくすんだ、けして綺麗とは言えない花。

うちの庭まで侵入してきて毎年不愉快な気持ちになるのだけど、今日は違った。

 朝露に濡れた紫陽花が、とてもキラキラして見え、違う世界にいるみたい。

夫の貴士も、気分転換をしたいのかもしれない。

梅雨の晴れ間が、私をそう思わせた。

あの人が突然、旅に出た理由なんて知りたくもなかったし。



「おはよ。吉岡さん、足の具合どお?」

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