夫のいない間に
 夫の書斎の机の中にあったハンカチから、同じような匂いがしていた。

 ようなっていうか、まさにこの香りではなかったか…。

 夫は、この柑橘系の香りをとても大事に仕舞っていた。

 「私が受診するわけではないのですが、実は、夫が先月、こちらにかかってまして」


 保険証を見せ説明すると、その美しい女性はしばらく考える様子を見せた。

 「先生に、夫の病気についてお聞きしたいんです、会わせて貰えますか?」


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