夫のいない間に
 「ご主人は、吉岡貴士さんで間違いないですか?」

 「はい、そうです」

 さっきよりも、随分と低い声で話す。
 横顔も美しい医者は、カルテらしきパソコンの画面を見たあと、気の毒そうに私に視線を移した。

 夫は、 重度の躁鬱(そううつ)だったりするのだろうか?

 まさか。
 実は、家族に内緒で精神病院に入院しているとか?

 嫌な予感しかしない。
 女医が堅い表情のまま続けた。





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