夫のいない間に
 私自身、性格的には明るくないけれど、病んでいると感じた事も無いし、そういう知り合いもいなかったので、医師の言っている事が良く分からなかった。

 「まず、心療内科を受診される患者様の共通的な症状をお話しますね」

 美人女医は、二枚の紙を机に並べて、自覚症状の箇条書きされたものと、医師が病だと判断する症状のそれを読み上げた。

 聞いていて確かにそれはないな、と思う事が大半。

 夫は良く寝ていたし、朝もちゃんと起きられていた。
 食事も、ケチをつけながらも殆ど完食していたし、趣味のゴルフや温泉、風俗も、恐らく出向いていた。

 いつもより元気が無かったのは間違いないのだけど。

 「ご主人は、確かにやる気を失っておいででした。でも、半月に渡って様子を見守りましたが、精神的なものからくる体調の変化はありませんでした。ご本人は病気なのは間違いないと断言されていましたが」

 「断言……」

  人の意見、(特に女性の)をあまり聞かない貴士が、この女医を困らせたのは間違いない。

 「スミマセン…」と私は謝った。

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