夫のいない間に
 「私は、医者として吉岡さんの力添えになれば、とお話等はお伺いしました。薬等を処方しなくても、それだけで気持ちの落ち込みが改善する場合もありますので」

 優しく続ける女医の話を聞きながら、複雑な想いになった。

 家族にも話せないことを、夫は他所で相談をする。

 そうさせる妻にも問題はあるのかもしれないけれど、夫にとって、妻って、一体なんなんだろう? と。

 「ですが」

 声を落とした女医は、再びあのハンカチを取り出して、何故かそれを握りしめていた。医者らしからぬ仕草に彼女の躊躇いを感じた。


 「″ですが ″なんですか?」

  こちらまで緊張するじゃないの。
  急に柑橘系の香りが鼻につく。
  数秒ほどの間を開けて、女医は驚く事を言った。

 「奥様には申し上げにくいのですが、実はご主人から告白されまして」



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