夫のいない間に
 「……お」

 「何だよ、その茶髪。急に若作りして」

  ″おかえり ″ も言わさず、いきなり私のヘアカラーのダメ出しから始まった。
 四十過ぎて、白髪隠して何が悪いのよ。

 「あと車検でタイヤ全部変えたのか? 二つだけ変えてローテーションさせろよ。お前の通勤用に金かけんなよ」

 冷蔵庫から、自分用の辛口ビールを取り出して、私を睨み付けながら夫は続けた。


 「ビール、随分減ってる。焼酎も。俺がいない間に勝手に飲むな」

 私が口を開ける前に、次々と文句ばかり。

 梅雨なのに、雨の降らない外からうぐいすの鳴き声が聞こえた。
 九州では、うぐいすが鳴いて春を告げるのは5月頃まで。
 それ以降に、ホーホケキョと鳴いてるのは、雌に相手にされず子孫を残せなかった雄だと聞いたことがある。

 大きな窓から、隣の家の紫陽花が変色してるのに気が付いた。
 青ざめた花は、今の私の心境と同じように思えた。








< 91 / 95 >

この作品をシェア

pagetop