すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
曖昧な関係
あっ、まずいかも……。
九月に入ってもまだ続くうだるような暑さが続き、疲労が溜まっていたのかもしれない。
街中の交差点で信号待ちをしていたその時、不意に視界が霞みぐっと瞼を閉じた。
目の前の大通りには、多数の車が行き交っている。両脚に力を込めてなんとかその場に踏みとどまろうとしたけれど、思うようにいかない。体はぐらりと前方に傾いた。
「危ない」
景色も騒音もすべてぼやけていく中、鋭く叫ぶ男性の声だけははっきりと耳に届いた。
ぐいっと腕を引かれて、後方へ引き戻される。平衡感覚を失った体は、誰かに力強く抱き留められた。
「なに馬鹿な真似をしているんだ! 危ないだろ」
それから、強い口調の叱責が飛んでくる。
瞼をキツク閉じて、目が回ったような気持ち悪さをやり過ごす。
「大丈夫か?」
なかなか目を開けない私に、男性が心配そうに言う。
ようやく意識がはっきりしてきたところで、なんとか体を起こした。
「す、すみません」
もしかして、相手を勘違いさせていたかもしれない。
飛び出そうとしていたわけではないと、慌てて弁解する。
「急に調子が悪くなってしまって……」
そう言いながら上げた視線の先にいたのは、ずいぶんと背の高い三十代前半くらいの男性だった。
九月に入ってもまだ続くうだるような暑さが続き、疲労が溜まっていたのかもしれない。
街中の交差点で信号待ちをしていたその時、不意に視界が霞みぐっと瞼を閉じた。
目の前の大通りには、多数の車が行き交っている。両脚に力を込めてなんとかその場に踏みとどまろうとしたけれど、思うようにいかない。体はぐらりと前方に傾いた。
「危ない」
景色も騒音もすべてぼやけていく中、鋭く叫ぶ男性の声だけははっきりと耳に届いた。
ぐいっと腕を引かれて、後方へ引き戻される。平衡感覚を失った体は、誰かに力強く抱き留められた。
「なに馬鹿な真似をしているんだ! 危ないだろ」
それから、強い口調の叱責が飛んでくる。
瞼をキツク閉じて、目が回ったような気持ち悪さをやり過ごす。
「大丈夫か?」
なかなか目を開けない私に、男性が心配そうに言う。
ようやく意識がはっきりしてきたところで、なんとか体を起こした。
「す、すみません」
もしかして、相手を勘違いさせていたかもしれない。
飛び出そうとしていたわけではないと、慌てて弁解する。
「急に調子が悪くなってしまって……」
そう言いながら上げた視線の先にいたのは、ずいぶんと背の高い三十代前半くらいの男性だった。
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