半年間、一生分の愛をくれたキミに ー余命半年の私の最後の恋ー

「…何？なんか用？」


私が見惚れていたため、視線に気づかれてしまった。


彼はあくびをしながら起き上がって、下から私を睨むように見つめてくる。


「いや、あの…すみません」


それよりどうして立ち入り禁止の場所に人がいるのだろうか。


まあ私も人のこと言えないんだけど。


「お前、なんでここにいるの？」


「なんでって…」


「ここ、立ち入り禁止だけど」


「それはあなたも同じでしょ？」この言葉は胸に秘めておいた。


なぜか、彼には今朝の"ウワサ"のことを知られたくないと思った。


「あ、もしかして、男たらしってお前のこと？」


最悪だ。


彼にだけは絶対知られたくなかったのに。


「べ、別に男たらしなんかじゃないです！」


ただの"ウワサ"ってだけで、実際には男遊びなどしていない。


「まあ俺にはお前がそんなヤツには見えないけどな」


「えっ？」


意外だった。


きっと彼も他の人と同じように、騒いだり、変な"ウワサ"を流すんだろうなと思ってたのに。


こう見えて案外いい人だったりして。


「こう見えてって…初対面なのに失礼だな」


「あっ…」


無意識のうちに、声に出ていたようだ。


「すみません…」


ここは人がいるし場所を変えよう。


そう思って歩き出した時、彼に腕を掴まれた。


驚いて振り返ると、真剣な眼差しで私の目を見つめてきた。


「お前、無理すんなよ」


「えっ？」


無理すんなって…あの"ウワサ"のこと？


「変に騒ぎ立てられて居心地悪くなったからここに来たんだろ？だったら俺のことなんて気にするな」


彼に私の心が見透かされている気がした。


「お前は確か…中枝だっけ？俺は泉快斗」


「そうです。よろしくお願いします」


…ん？泉快斗？


どこかで聞いたことあるけど…思い出せない。


きっと気のせいだ。


同じ名前の人も、似たような名前の人も、たくさんいるんだから。