総理大臣になりたい私が、なぜかアイドルになった話。
2025年10月21日。
私はこの日付をきっと一生忘れない。
私の1つ目の夢が叶って、2つ目の夢が永遠に叶わなくなった日。
「ほら、咲良、元気出して!」
「元気なんて出ないよ~」
ここは、山川第二中学校、2年1組の教室。
季節はやっと少し涼しくなってきた10月の終わり。
登校してくるクラスメイトたちの顔もなんだか明るい。
けど、私はさっきから机につっぷして、もう動けない。動く気ゼロ。
「べつにいいじゃん。よかったじゃん、日本で初めての女性総理大臣」
小学校の頃からの親友・小春がなぐさめてくれるけど、私はやっぱり顔を上げられない。
「いや、もちろん、それはうれしい! うれしいんだよ!」
「だったら」
「でも、やっぱり私がなりたかったんだも~~~~~~ん」
そう、小さいころからの私の夢。
それは、「女性初の総理大臣になること!」。
知ってる?
総理大臣って、初代の伊藤博文から103代目の石破茂さんまで、ずーーーーっと男の人だったんだよ。
伊藤博文が総理大臣になったのが明治18年。
で、今。時は令和。
「そろそろ女性の総理大臣がでるかも」、っていわれてたけど、なかなか実現しなくて、「やっぱり女の人が総理大臣になることはないのかなー」なんて思ってがっかりしてた。
ところが、2025年10月21日。
内閣総理大臣指名選挙で、高市早苗さんが総理大臣に決まった。
いや、うれしかったんだよ?
「女性総理大臣の誕生」は本当にうれしい!それも私の夢の1つだったから。
けどさ。
「女性で初めての総理大臣」っていう夢は、もうなにをどうしてもぜったいムリになったんだよねぇ。
ううう、としょんぼりしている私に、小春はぐいっと顔を近づける。
その目は真剣そのもの。
「ねぇ、咲良。咲良の本当にやりたいことは、『日本で初めての女性総理大臣になること』じゃない。その先でしょ!」
小春の言葉に私はハッとする。
そう。もちろん、そう。
私の夢。
それは、総理大臣になって……日本中の人が「楽しい! 幸せ!」って思えるような社会をつくること!
ムリだと思う?
私は思わない。
すっごくすっごく難しいとは思うけど、でもきっといつか、私が。
そして、それを叶えられるのは、「政治」そして、「総理大臣」しかないと思うんだ。
あれは、私が小学校の3年生のころ。
近所の公園のすべり台が壊れてて、ずーっと使用禁止になってて。
早く直して遊べるようにしてほしいってみんな思ってたけど、どうにもならなかった。
それがある日。
ちょうど市議会議員の選挙中で、街中を選挙カーが走っていて。
友だちのだれかが、思いつきでいったんだ。
「あの、車に乗ってる人にお願いしたらどうだろう」って。
それはすごく名案に思えて、私たちはすぐに実行した。
たまたま近くを通った選挙カーに、みんなで手をあげて、そしたら中からたすきをかけたきれいな女の人が出てきてくれて。
すべり台のことを話したら、すごく真剣に聞いてくれたあと、「わかりました、私が当選したら、しっかり議題にあげます」っていってくれて。
でも、まだ小3だった私たちは、その日のことはすぐに忘れちゃってた。
だけど、小4の夏休み明け。
公園のすべり台は、真新しい遊具に変わっていた。
すべり台と登り棒と雲梯と、ロープのはしごまでついた、すごく楽しいヤツに。
その遊具を見たとき、すぐにあの選挙カーの女の人の顔を思い出して、そして私は思ったんだ。
世界は変えられるんだ、って。
「そう。そうだよね、小春! 私のやりたいことはなくなってない! がんばるよ、私!」
「えらい咲良! それでこそ、私の咲良だよ! ……で、これなんだけどさぁ」
そういって、ちょっとすまなそうな顔で小春はスマホの画面を見せてくる。
「ん? なにこれ」
「ごめんっ! これ、勝手に応募しちゃたの」
「アイドルグループ『シフォン』、追加メンバー募集……?」
全体的にピンク色の可愛らしい画面の一番上の文字を読み上げると、小春がうんうんと頷く。
「そうなの。このグループね、デビュー直前に2人脱退しちゃって、追加メンバー募集してて」
「え、小春、アイドルになるの!」
思わず大きな声をだしてしまうと、小春があわててシーッと人差し指を口に当てる。
「違う、私じゃなくて咲良。これ、自薦も他薦もオッケーのオーディションだから」
「へ!? 私がアイドル!? 無理無理! 歌もダンスも下手だし、っていうかアイドル興味ないし!」
「いや、咲良ならいける! 年少さんからアイドルオタクの私がいうんだから、間違いない!」
「でも私は政治家になって総理大臣になるから……」
「咲良。選挙に出られるのは何歳からだっけ?」
「市議会議員と衆議院は25歳から。参議院は30歳から」
「ってことは、咲良は今14歳だから、あと11年は政治家にはなれないわけでしょ」
「まあそうだけど」
「じゃあ、それまでアイドルやればいいじゃない! アイドルやって、24歳で引退して、25歳で選挙。うん、そうしよう!」
「いやそれ、むちゃくちゃ」
「そんなことない! どっちも日本をハッピーにする大切な仕事じゃん! うん、政治家ととアイドル、似てるといえば似てるかも!?」
「似てないし」
「お願い! この子、「シフォン」のピンク担当の子、めっちゃ好みなの~~~。売れてほしいの~」
「小春、私を利用して、このピンクの子と近づきたい、とか思ってるんじゃ……」
「思ってない! ね~、私、前から咲良はアイドル適性が高いと思ってたんだよ~。とりあえずオーディション受けるだけ、ね! お願い!!」
「えー」
「いいじゃーん。うちのママについてきてもらってさ、かわいいカフェでお茶して帰ろうよ♡」
「うーん……、まぁ受けるだけなら」
今思うと、ここが運命の分かれ道だった。
この日から、平凡だった私の人生は、急展開。
ジェットコースターみたいに大忙しの毎日のはじまり。
だけど、この時はまだそれに気がついていなかったんだ……。
私はこの日付をきっと一生忘れない。
私の1つ目の夢が叶って、2つ目の夢が永遠に叶わなくなった日。
「ほら、咲良、元気出して!」
「元気なんて出ないよ~」
ここは、山川第二中学校、2年1組の教室。
季節はやっと少し涼しくなってきた10月の終わり。
登校してくるクラスメイトたちの顔もなんだか明るい。
けど、私はさっきから机につっぷして、もう動けない。動く気ゼロ。
「べつにいいじゃん。よかったじゃん、日本で初めての女性総理大臣」
小学校の頃からの親友・小春がなぐさめてくれるけど、私はやっぱり顔を上げられない。
「いや、もちろん、それはうれしい! うれしいんだよ!」
「だったら」
「でも、やっぱり私がなりたかったんだも~~~~~~ん」
そう、小さいころからの私の夢。
それは、「女性初の総理大臣になること!」。
知ってる?
総理大臣って、初代の伊藤博文から103代目の石破茂さんまで、ずーーーーっと男の人だったんだよ。
伊藤博文が総理大臣になったのが明治18年。
で、今。時は令和。
「そろそろ女性の総理大臣がでるかも」、っていわれてたけど、なかなか実現しなくて、「やっぱり女の人が総理大臣になることはないのかなー」なんて思ってがっかりしてた。
ところが、2025年10月21日。
内閣総理大臣指名選挙で、高市早苗さんが総理大臣に決まった。
いや、うれしかったんだよ?
「女性総理大臣の誕生」は本当にうれしい!それも私の夢の1つだったから。
けどさ。
「女性で初めての総理大臣」っていう夢は、もうなにをどうしてもぜったいムリになったんだよねぇ。
ううう、としょんぼりしている私に、小春はぐいっと顔を近づける。
その目は真剣そのもの。
「ねぇ、咲良。咲良の本当にやりたいことは、『日本で初めての女性総理大臣になること』じゃない。その先でしょ!」
小春の言葉に私はハッとする。
そう。もちろん、そう。
私の夢。
それは、総理大臣になって……日本中の人が「楽しい! 幸せ!」って思えるような社会をつくること!
ムリだと思う?
私は思わない。
すっごくすっごく難しいとは思うけど、でもきっといつか、私が。
そして、それを叶えられるのは、「政治」そして、「総理大臣」しかないと思うんだ。
あれは、私が小学校の3年生のころ。
近所の公園のすべり台が壊れてて、ずーっと使用禁止になってて。
早く直して遊べるようにしてほしいってみんな思ってたけど、どうにもならなかった。
それがある日。
ちょうど市議会議員の選挙中で、街中を選挙カーが走っていて。
友だちのだれかが、思いつきでいったんだ。
「あの、車に乗ってる人にお願いしたらどうだろう」って。
それはすごく名案に思えて、私たちはすぐに実行した。
たまたま近くを通った選挙カーに、みんなで手をあげて、そしたら中からたすきをかけたきれいな女の人が出てきてくれて。
すべり台のことを話したら、すごく真剣に聞いてくれたあと、「わかりました、私が当選したら、しっかり議題にあげます」っていってくれて。
でも、まだ小3だった私たちは、その日のことはすぐに忘れちゃってた。
だけど、小4の夏休み明け。
公園のすべり台は、真新しい遊具に変わっていた。
すべり台と登り棒と雲梯と、ロープのはしごまでついた、すごく楽しいヤツに。
その遊具を見たとき、すぐにあの選挙カーの女の人の顔を思い出して、そして私は思ったんだ。
世界は変えられるんだ、って。
「そう。そうだよね、小春! 私のやりたいことはなくなってない! がんばるよ、私!」
「えらい咲良! それでこそ、私の咲良だよ! ……で、これなんだけどさぁ」
そういって、ちょっとすまなそうな顔で小春はスマホの画面を見せてくる。
「ん? なにこれ」
「ごめんっ! これ、勝手に応募しちゃたの」
「アイドルグループ『シフォン』、追加メンバー募集……?」
全体的にピンク色の可愛らしい画面の一番上の文字を読み上げると、小春がうんうんと頷く。
「そうなの。このグループね、デビュー直前に2人脱退しちゃって、追加メンバー募集してて」
「え、小春、アイドルになるの!」
思わず大きな声をだしてしまうと、小春があわててシーッと人差し指を口に当てる。
「違う、私じゃなくて咲良。これ、自薦も他薦もオッケーのオーディションだから」
「へ!? 私がアイドル!? 無理無理! 歌もダンスも下手だし、っていうかアイドル興味ないし!」
「いや、咲良ならいける! 年少さんからアイドルオタクの私がいうんだから、間違いない!」
「でも私は政治家になって総理大臣になるから……」
「咲良。選挙に出られるのは何歳からだっけ?」
「市議会議員と衆議院は25歳から。参議院は30歳から」
「ってことは、咲良は今14歳だから、あと11年は政治家にはなれないわけでしょ」
「まあそうだけど」
「じゃあ、それまでアイドルやればいいじゃない! アイドルやって、24歳で引退して、25歳で選挙。うん、そうしよう!」
「いやそれ、むちゃくちゃ」
「そんなことない! どっちも日本をハッピーにする大切な仕事じゃん! うん、政治家ととアイドル、似てるといえば似てるかも!?」
「似てないし」
「お願い! この子、「シフォン」のピンク担当の子、めっちゃ好みなの~~~。売れてほしいの~」
「小春、私を利用して、このピンクの子と近づきたい、とか思ってるんじゃ……」
「思ってない! ね~、私、前から咲良はアイドル適性が高いと思ってたんだよ~。とりあえずオーディション受けるだけ、ね! お願い!!」
「えー」
「いいじゃーん。うちのママについてきてもらってさ、かわいいカフェでお茶して帰ろうよ♡」
「うーん……、まぁ受けるだけなら」
今思うと、ここが運命の分かれ道だった。
この日から、平凡だった私の人生は、急展開。
ジェットコースターみたいに大忙しの毎日のはじまり。
だけど、この時はまだそれに気がついていなかったんだ……。

