マリオと麻理
2. それから、、、
中間考査が終わってホッとした頃、ぼくは久しぶりにマリオと会った。 いつものあの交差点で。
「元気だった?」 「心配させちゃったね。 しばらくはショックで動けなくて、、、。」
「あんなことをされたんだもん。 気持ち分かるよ。」 「麻理が来てくれてよかった。 来てくれなかったらどうなってたんだろう?」
「もう過ぎたことだよ。 考えるのはよそう。」 「でも、、、。」
「気になるのは分かるよ。 でも気にしたってどうしようもないじゃない。」 「そうだよね。 今は麻理が居るんだもんね。」
マリオはそう言いながら石ころを蹴飛ばした。 この道、通学路になっているらしい。
近所の小学生たちもよく通っていくんだ。 知っている子も多い。
ぼくは二人でベンチに座った。 あの日みたいに。
この通りの裏側に喫茶店が有る。 そして公園が続いている。
公園の店側にあの倉庫が建っている。 しばらくあの店には行きたくないな。
この辺では評判な店だ。 美味しいコーヒーを飲ませてくれるって。
でもそのマスターがパパだったなんて、、、。 「ねえ、マリオ。 別の交差点で待ち合わせない?」
「別の交差点?」 「そうそう。 ここだと嫌なことを思い出しちゃうからさ。」
「それもそうだね。 じゃあ何処にする?」
ぼくはそう聞かれて黙り込んだ。 「あそこのさあ、時計台が有る交差点はどう?」
「白石川の交差点か? いいね。 分かりやすいし。」 「決まりだね。 明日からはそこで待ち合わせよう。」
実は白石川の交差点はマリオの家の近くなんだ。 いつか行ってみたいな。
それでベンチを立ったぼくらは自販機でジュースを買ってから歩き始めた。 賑やかな通りだ。
大通りだからかバスもけっこう行き交っている。 そんなに乗らないんだけど。
たまにお母さんが働いてる会社の車も通り過ぎていく。 乗ってたら手を振ってくるからすぐに分かる。
今日も大きなビルの掃除をするんだって言ってたな。 お父さんは演習の真っ最中。
やり始めるとしばらくは帰ってこない。 野戦訓練もやるんだって。
そこで食べるカレーがまた美味しいんだって言ってたっけ。 外で食べるんだもん 美味しいだろうなあ。
ブラブラと黙ったまま歩いていると時計台が見えてきた。 「ここだね。」
「明日からはここで待ち合わせしようね。」 「楽しみだなあ。」
しばらく時計台を見上げてからぼくはマリオと別れたんだ。 (元気そうで良かったよ。)
その夜、久しぶりに父さんが帰ってきた。 「どうしたの?」
「たまの休みを貰ったんだ。 生気を養って来いって。」 「そうなんだ。」
「麻理は元気にしてたか?」 「もちろんこの通りに元気だよ。」
「なんか、おっさんをぶっ飛ばして新聞に載ってたみたいだけど、、、。」 「ああ、あれね。 友達を虐めてたやつが居たから頭に来てやったんだよ。」
「お前、ケガはしなかったか?」 「うん。 大丈夫。 そのおじさんはナイフを持ってたけどね。」
「ナイフ?」 「そう。 小さなやつ。」
「サバイバルナイフかなあ?」 「さあね。 何かは知らない。」
「それはどうしたんだ?」 「殴る前に奪って溝に捨ててきた。」
「危ないなあ。 そんな時はちゃんと、、、。」 「分かってるよ。 喫茶店の裏だったからマスターに言って警察に話してもらった。」
「そうか。 それなら、、、。」 父さんは安心したようにビールの缶を開けた。
マリオは家に帰ってくるとnゲージだらけの部屋にバッグを置く。 そして日課のように窓を開ける。
今まではズボンを履いて男の子らしくしていたのに、この頃ではお母さんも気にしてスカートを履くように言ってきた。 スポーツ刈りだった頭も少しずつ伸ばし始めたんだって。
床屋に行った時、いつも切ってくれてる人がマリオを見て不思議そうな顔をしてたんだって。 そりゃそうだよね。
いきなりスカートを履くようになったし何処から見ても女の子?になってきたし。 それでおじさんは聞いた。
「これから髪はどうするね?」 「しばらく伸ばします。」
「そうか。 じゃあ時々毛先を揃えたほうがいいね。」 それで時々は床屋に行くんだって。
慣れないセミロングの髪に戸惑うマリオを見てぼくは笑ってしまった。 「そんなに笑わなくても、、、。」
「ごめんごめん。 ぼくはこれまでずっとロングだったからさあ、マリオがどっか面白く見えちゃって。」 「意地悪だなあ。」
「意地悪かもよ。 ぼくって。」 「でもなんか、そういうのって好きだなあ。」
時計台の前で待ち合わせた後、何の予定も無いままにブラブラと歩く。 気を使うことも無く、使わせることも無く、ごく自然に寄り添っている。
カップルにも見られそうだけどそんなつもりも無いし、好きだとか嫌いだとかいう感情も無い。 ただ傍に居るのが嬉しいだけ。
変わってるのかなあ?
「元気だった?」 「心配させちゃったね。 しばらくはショックで動けなくて、、、。」
「あんなことをされたんだもん。 気持ち分かるよ。」 「麻理が来てくれてよかった。 来てくれなかったらどうなってたんだろう?」
「もう過ぎたことだよ。 考えるのはよそう。」 「でも、、、。」
「気になるのは分かるよ。 でも気にしたってどうしようもないじゃない。」 「そうだよね。 今は麻理が居るんだもんね。」
マリオはそう言いながら石ころを蹴飛ばした。 この道、通学路になっているらしい。
近所の小学生たちもよく通っていくんだ。 知っている子も多い。
ぼくは二人でベンチに座った。 あの日みたいに。
この通りの裏側に喫茶店が有る。 そして公園が続いている。
公園の店側にあの倉庫が建っている。 しばらくあの店には行きたくないな。
この辺では評判な店だ。 美味しいコーヒーを飲ませてくれるって。
でもそのマスターがパパだったなんて、、、。 「ねえ、マリオ。 別の交差点で待ち合わせない?」
「別の交差点?」 「そうそう。 ここだと嫌なことを思い出しちゃうからさ。」
「それもそうだね。 じゃあ何処にする?」
ぼくはそう聞かれて黙り込んだ。 「あそこのさあ、時計台が有る交差点はどう?」
「白石川の交差点か? いいね。 分かりやすいし。」 「決まりだね。 明日からはそこで待ち合わせよう。」
実は白石川の交差点はマリオの家の近くなんだ。 いつか行ってみたいな。
それでベンチを立ったぼくらは自販機でジュースを買ってから歩き始めた。 賑やかな通りだ。
大通りだからかバスもけっこう行き交っている。 そんなに乗らないんだけど。
たまにお母さんが働いてる会社の車も通り過ぎていく。 乗ってたら手を振ってくるからすぐに分かる。
今日も大きなビルの掃除をするんだって言ってたな。 お父さんは演習の真っ最中。
やり始めるとしばらくは帰ってこない。 野戦訓練もやるんだって。
そこで食べるカレーがまた美味しいんだって言ってたっけ。 外で食べるんだもん 美味しいだろうなあ。
ブラブラと黙ったまま歩いていると時計台が見えてきた。 「ここだね。」
「明日からはここで待ち合わせしようね。」 「楽しみだなあ。」
しばらく時計台を見上げてからぼくはマリオと別れたんだ。 (元気そうで良かったよ。)
その夜、久しぶりに父さんが帰ってきた。 「どうしたの?」
「たまの休みを貰ったんだ。 生気を養って来いって。」 「そうなんだ。」
「麻理は元気にしてたか?」 「もちろんこの通りに元気だよ。」
「なんか、おっさんをぶっ飛ばして新聞に載ってたみたいだけど、、、。」 「ああ、あれね。 友達を虐めてたやつが居たから頭に来てやったんだよ。」
「お前、ケガはしなかったか?」 「うん。 大丈夫。 そのおじさんはナイフを持ってたけどね。」
「ナイフ?」 「そう。 小さなやつ。」
「サバイバルナイフかなあ?」 「さあね。 何かは知らない。」
「それはどうしたんだ?」 「殴る前に奪って溝に捨ててきた。」
「危ないなあ。 そんな時はちゃんと、、、。」 「分かってるよ。 喫茶店の裏だったからマスターに言って警察に話してもらった。」
「そうか。 それなら、、、。」 父さんは安心したようにビールの缶を開けた。
マリオは家に帰ってくるとnゲージだらけの部屋にバッグを置く。 そして日課のように窓を開ける。
今まではズボンを履いて男の子らしくしていたのに、この頃ではお母さんも気にしてスカートを履くように言ってきた。 スポーツ刈りだった頭も少しずつ伸ばし始めたんだって。
床屋に行った時、いつも切ってくれてる人がマリオを見て不思議そうな顔をしてたんだって。 そりゃそうだよね。
いきなりスカートを履くようになったし何処から見ても女の子?になってきたし。 それでおじさんは聞いた。
「これから髪はどうするね?」 「しばらく伸ばします。」
「そうか。 じゃあ時々毛先を揃えたほうがいいね。」 それで時々は床屋に行くんだって。
慣れないセミロングの髪に戸惑うマリオを見てぼくは笑ってしまった。 「そんなに笑わなくても、、、。」
「ごめんごめん。 ぼくはこれまでずっとロングだったからさあ、マリオがどっか面白く見えちゃって。」 「意地悪だなあ。」
「意地悪かもよ。 ぼくって。」 「でもなんか、そういうのって好きだなあ。」
時計台の前で待ち合わせた後、何の予定も無いままにブラブラと歩く。 気を使うことも無く、使わせることも無く、ごく自然に寄り添っている。
カップルにも見られそうだけどそんなつもりも無いし、好きだとか嫌いだとかいう感情も無い。 ただ傍に居るのが嬉しいだけ。
変わってるのかなあ?

