離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。


 熱のこもった口調で真っ直ぐ言われ、正直嬉しかった。
 何故かわからないが、嫌ではない。


「……はい」


 六花ももっと話したい、もっと一緒にいたいと思った。
 こんな気持ちは初めてで、自分自身に戸惑っている。

 非日常的な空間の中にいる吊り橋効果なのか、相手が惺久だからなのかはわからない。

 ただ先程までは早く帰りたいと思っていたのに、もう少し留まりたいと思ってしまっている。

 この仮面を付けていれば違う自分でいられる気がするから。
 お酒を飲んで酔いが回っているから。
 六花は様々な言い訳を並べ、惺久の手を取った。

 いつ予約したのか、誘われるようにホテルの一室に入った。


「ルームサービスでも頼みましょうか」


 緊張している六花を見兼ねてか、惺久は赤ワインのボトルを頼んだ。
 高級ホテルの高層階から望む夜景を見ながら、乾杯した。

 イルミネーションの輝きを放つ夜景を見て、そういえば今日はクリスマスイヴだったと思い出す。


「――夏芭さん、」


 自分のことを呼ばれたとわからず不思議そうにきょとんと惺久を見上げると、顔が近付いて唇が重なり合った。
 初めてのキスはワインの味がした。


(……そうだ、今の私は夏芭なんだっけ)


 ぼうっとする頭の隅でそんなことを考えていると、離れた唇が角度を変えて再び重なる。
 今度はもっと激しく、濃厚的に。

 それから先は何も考えられなくなっていた。
 仮面はいつの間にかベッドの下に転がっていたが、いつ外したのかそれとも外されたのか記憶にない。

 そして、彼の顔をちゃんと見た記憶もない。
 覆い被さられて、彼の口付けを受け止めることに夢中だった。


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