離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。
仮面の奥の瞳が六花を真っ直ぐ捉える。
その瞳には確かに熱が宿っており、ドクンと心臓が飛び跳ねた。
「――涼風さん、足の具合はいかがですか?」
「え? そういえばだいぶ痛みが引きました」
「良かった」
「でもこのまま会場には戻らず、帰ろうと思います。この靴で戻るのは恥ずかしいですし……」
このペタンコのパンプスは生前に貴雪がクリスマスプレゼントに贈ってくれたパンプスだった。
つまり十年以上前に買ったもので、六花が唯一持っているパンプスでもある。
シンプルでどんな服装にも合わせやすく、履きやすくて疲れないためとても気に入っていた。
ボロボロになって穴が空いても修理して履き続けていた。
煌びやかなドレスにはどう見ても合わないが、スニーカーを合わせるのもおかしいのでこの靴を履いた。
しかし足元だけ魔法の解けたシンデレラみたいで、見た目は見窄らしい。
かけがえのない思い出のプレゼントだが、流石にこの姿であの華々しい空間には戻れない。
「では、もう少しだけ僕と一緒にいていただけませんか」
「え……」
「もっとあなたと話したい」
そっと手を握られ、先程よりも大きく心臓が跳ね上がる。
「あ、えっと……」
六花は恥ずかしそうに惺久から視線を逸らし、もう片方の手で仮面に触れた。
「その仮面は付けたままでも構いません。話したくないことは聞きません。ただ、もう少しだけ一緒にいたいんです」