離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。


 朝起きて顔面蒼白になった。
 なんであんなことしてしまったのだろう。

 二十八年間慎ましく生きていたというのに、お酒と雰囲気に流されてしまった。
 いや流されてなどいない、あの夜のことは自ら望んでいたように思う。


「……本当になんてことしてしまったんだろ」


 思い出そうとすると羞恥心で頭が痛くなる。
 あの夜のことは綺麗サッパリ忘れ去ろうと思った。


「あ、でもホテル代払わずに出て行ってしまったな……」


 いつ予約したのか全然わからなかったが、気づいたらパーティー会場のホテルの一室にいた。
 飛び起きて慌てて出て行ってしまったけれど、後から思い返せば最低なことをしてしまった。

 六花は惺久の名刺を見返す。これが昨夜の出来事が夢ではなかったと物語る証拠だ。
 彼は律儀に靴の修理代を払うと言ってくれたが、ホテル代を払わせてしまったので修理代は請求しないことにした。

 つまり、惺久に連絡することはない。


(大人だもの、一夜の過ちくらいあるよね……)


 自分に言い聞かせ、あの夜のことはなかったことにしようと思った。
 幸いにしてこちらの連絡先がわかるものは何も渡していない。

 弁護士と関わることもこの先はないはずだ。
 彼と会うことは二度とない、そう思っていたのだが――。


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