離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。


 *

 年末年始が過ぎ、年が明けた半ば頃。
 凪子が血相を変えて帰宅した。


「夏芭! あなた何をしたの!?」


 ただいまより先に凪子は訊ねるが、何の話だかわからない。
 夏芭も「何が?」と首を傾げていた。


「今日私のところに直接永瀬さんが訪ねて来られたのよ」
「ナガセさん? 誰?」
「永瀬惺久さん。永瀬法律事務所っていう大手法律事務所代表のご子息よ。その惺久さんが、あなたと結婚させて欲しいって私に頼みに来たのよ!」
「ええっ!?」


 鍋を煮込みながら話を聞いていた六花は、鈍器で頭を殴られたような感覚になった。


「なんで!?」
「知らないわよ! どうしても夏芭の連絡先がわからないからって私のところに来たのよ」
「私、永瀬さんと会ったことなんて、」
「夏芭さん!」


 六花は大声をあげた。


「少々よろしいですか? 大事なお話があります」
「え、今?」
「今です、今でないとダメなのです。奥様、申し訳ございませんが鍋を見てていただけますか?」
「え、ええ。構わないけれど……」
「すみません! さあ参りましょう、夏芭さん!」
「ちょ、ちょっとりっちゃん」


 あまりにも不自然すぎるのは百も承知だったが、細かいことを気にしている場合ではないので強引に夏芭を連れ出した。

 六花の自室に連れて行き、バタンと扉を閉める。


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