離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。
惺久も真剣な表情で夏芭を見返す。
「非常識なお願いをしていることはわかっています。一年限りの契約結婚とは言え、六花さんのことは大切にしますし幸せにするとお約束します」
「……!」
思わず六花の心臓が飛び跳ねた。
契約結婚とは言え、大切にするや幸せにすると言われたら――ときめく気持ちを隠せない。
「わかりました、永瀬さんを信じます。どうかりっちゃんのこと、よろしくお願いします」
夏芭は立ち上がり、惺久に向かって深々と頭を下げる。
それに倣い、惺久も立ち上がってお辞儀をした。更に二人で握手まで交わす。
「借金の件もよろしくお願いします」
「その件についてもお任せください」
「……え、ちょっと待って……?」
何だか話がまとまっている気がするが、当の本人である六花だけが置いてきぼりだ。
(私、結婚することになってる……?)
夏芭の気持ちは嬉しい。そんな風に思っていてくれていたなんて、目頭が熱くなった。
惺久のことは読めないところもあるが、はっきりと大切にすると言い切ってくれたことは嬉しかった。
だけど、本当にこの人と結婚して良いのだろうか。
「これからよろしくお願いします――六花さん」
惺久は六花に向かって柔らかく微笑んだ。
柔和で優しげな笑みなのに、ノーとは言えない迫力のようなものを感じた。
六花は腹を括るしかないのだと悟った。
「……よろしくお願いします」