離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。
「夏芭! やめて、この借金は私が返さないと意味がないんだから」
「なんで? もういいじゃない! りっちゃんは充分頑張ったでしょ」
「夏芭……」
「りっちゃんが頑張ってるの、充分見てきた。行きたかった大学も諦めて、自分のこと全部後回しにして頑張ってきたじゃない。もう楽になってもいいんじゃないの?」
夏芭は目を真っ赤にしながら、真っ直ぐに六花のことを見つめる。
「そろそろりっちゃん自身の幸せを考えてよ……」
「私自身の、幸せ……?」
今のままでも充分幸せだと思っていた。
優しい涼風家の元で働けて、日頃からとても良くしてもらえて。
お給料をいただいても借金返済に消えていくと思うと虚しくなる時もあったが、それでも自分は恵まれていると思っていた。
何より夏芭がいてくれるから、毎日が楽しかった。
「永瀬さん、りっちゃんのことちゃんと幸せにしてくれますか?」
夏芭はキッと惺久を睨む。
「りっちゃんは家族も同然なんです。私が風邪で寝込んだ時は付きっきりで看病してくれて、私が大好きなみかんゼリーを買ってきてくれたり、朝も毎日起こしてくれるんです」
「ちょ、ちょっと夏芭ってば」
「だから、絶対幸せにしてくれないと困るんです!」
若干瞳を潤ませながら、真剣な表情で惺久を見つめる夏芭。
その夏芭にやや圧倒されていたが、惺久は大きく頷いた。
「わかりました」