離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。
「わざわざすみません……」
「その言い方はおかしいな。謝られることじゃないと思うのだが」
「……そうですね。ありがとうございます」
「どういたしまして」
惺久は満足げに微笑まれ、なんだか背中あたりがムズムズする。
(……慣れないな)
六花は今日から惺久と同棲することになった。
契約結婚を承諾した後、すぐに宏海と凪子に報告した。
かなり驚かれたが、惺久が六花のことを夏芭だと勘違いしていたと話すとすぐに納得して喜んでくれた。
「まさか六花さんが……こんなに嬉しいことはないよ。おめでとう」
「本当におめでとう、六花さん。お祝いしなくっちゃね」
一年限りの期限付きだというのに、自分のことのように祝福してくれて嬉しい反面、心が痛かった。
家政婦の仕事は続けるつもりだから安心して欲しいと言うと、二人とも信じられないとばかりに首を横に振る。
「何言ってるの。結婚するのに他所の家の家事をするなんておかしいわよ」
「六花さん、気持ちはとても嬉しいんだよ。でもあの六条財閥の親戚となるのに家政婦を続けるというのは、どうなのかなぁ……」
「私たちのことは気にしないで。結婚準備も色々あるでしょうし、まずは引っ越さなきゃ」
「そうだね、結婚してからわかることもある。善は急げだ」
そんな感じで六花は惺久の自宅に転がり込む形となった。
最近のカップルは結婚前に同棲するのが当たり前と言うし、二人の気持ちもわかる。
だが、あまりにも急すぎて気持ちが追いつかない。