離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。
今に至るまで流されまくっているような気もするが、今更後には退けなかった。
なんだかんだでやると決めたのは自分なのだ。
離婚するまでやり遂げるしかない。
同棲については惺久も賛成してくれた。
「とりあえず俺の家で一緒に住もう」と言ってくれて、週末には引っ越しを済ませた。
六花の荷物は旅行鞄一つあれば事足りてしまう程だった。
(涼風家に来る時にほとんどのものは売ってしまったからな……)
これが昨日までの出来事だ。
惺久の自宅はコンシェルジュ付きの高級マンションの高層階だった。
流石としか言いようのない広々としたモデルルームのような部屋だった。
涼風家も充分大きな家だったが、これが一人暮らしの自宅だと思うと広すぎる。
初日から格の違いを感じてしまった。
(今更だけど、本当に私なんかで良かったのかな)
六条財閥会長である惺久の祖父は、孫の結婚相手が庶民の家政婦だと知って反対しないのだろうか。
こんな貧乏人、相応しくないと激怒して追い返されるかもしれない。
本当に妻役としての役目を果たせるのか不安になってしまった。
「どうした? 口に合わないか?」
トーストをちびちび食べる六花の顔を心配そうに覗き込む。
結婚が決まってから惺久はタメ口になり、六花と呼ぶようになっていた。