離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。
朝、洗面所で惺久と鉢合わせたら寝癖がピョンと跳ねていた六花を見て、惺久は楽しそうに笑っていたのだ。
惺久は基本的には優しいが、たまに意地悪だ。
「そうやってむくれるところもかわいいな」
「……からかわないでください」
「悪かったよ。六花、この後付き合ってくれないか」
「いいですけど……どこへ?」
「ジュエリーショップだ」
そう言って二人が向かった先は有名なジュエリーブランドのショップだった。
「あの惺久さん、指輪は結構ですと言ったはずですが……」
最近は結婚指輪を買わないカップルもいると聞くし、余計な出費を増やさないためにも指輪は遠慮した。
一度はそれで合意したはずなのに、六花は戸惑いながら惺久を見つめる。
「いや、やっぱり必要だと思ってな。結婚指輪というのはわかりやすい既婚者の証だろう」
「そうですね」
「前に結婚したこともないやつに夫婦間の問題がわかるか、と言われたことがあってな」
「そうだったのですか」
「既婚者だというのは依頼人によっては安心材料になり得る。そう思ったら指輪はしておきたい」
「なるほど、それなら買いましょう」
言いがかりのようなことを言われて、弁護士も大変なんだなぁと思った。
「ありがとう。それに、やっぱり六花にも指輪はしてもらいたい」