離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。
あと何年分の借金が残っているのか、あと何年で完済できるのか。
そればかり考えて生きていたのに、まさかこんな形で終結するとは思わなかった。
六花の指先が若干震えている。
「惺久さん、ありがとうございます。弁護士としての依頼料は返金されたお金から支払います」
「いや、そんなもの必要ない」
「そういうわけにはいきません」
「君は俺の妻じゃないか」
俺の妻。
その言葉にドクンと心臓が高鳴る。
「妻が困っているなら助けるのは当然のことだ。ただ本来身内の依頼は好まれることではないから、なるべく内密にしてもらえると助かる」
「わ、わかりました。本当に良いのですか……?」
「もちろん。あのお金は君が頑張って稼いだお金なんだ、好きに使うといい」
「あ、ありがとうございます」
惺久は優しく微笑み、ポンと六花の頭を撫でた。
「さて、野菜は切り終わった。鍋に入れてもいいか?」
「は、はい」
何とか料理に集中して切り替えようとするが、既に六花は自分を誤魔化せなくなってしまっていた。
(どうしよう、惺久さんのことが好きだ)
夏芭に聞かれても否定していた。
気づきたくなかった、一年で離婚する関係なのに好きになっても苦しいだけなのだから。
だから優しくしないで欲しかった、離婚が決まっているのに「俺の妻」だなんて言って欲しくなかった。
苦しい恋になるとわかっていたのに、もう六花が引き返せなくなってしまった。