離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。
思わぬ申し出にとくん、と胸が高鳴る。
「もちろん大丈夫ですが、何かあるのですか?」
「何もないけど、今まで二人で外食する機会がなかったからどうかと思ってな」
「良いですね。行きましょう」
デートみたいだ、と少女のようにはしゃいでしまう気持ちを押し込めながら微笑む。
訪れたのは比較的カジュアルな創作イタリアンレストランだった。
落ち着いた雰囲気でメニューを見ても、今まで見ていた料理の単価に比べたら安い。
(もしかして私が気を遣わないように選んでくれたのかな)
惺久のさりげない心遣いが嬉しい。
シャンパンで乾杯し、しばしの安らかな時間を過ごすこととなった――はずだった。
「もしかして、永瀬先生ですか?」
食事中、一人の中年女性が惺久に話しかけてきた。
「ご無沙汰しております」
「! これは……お久しぶりです」
一瞬惺久の表情が強張った。
六花はどうかしたのだろうかと首を傾げる。
「あの時は大変お世話になりました。今は無事穏やかに暮らせております」
「そうですか、何よりです」
「奥様でしょうか? すみません、ご夫婦のお時間を邪魔してしまって――」
そう言って彼女は視線を六花に向けた。
女性は六花の顔を見た瞬間、息を呑んで目を大きく見開く。
「……六花……?」