離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。


 名前を呼ばれ、その時初めてまともに女性の顔を見た。

 目元に小皺が増え、六花が最後に見た記憶よりもやや痩せていた。
 それでもはっきりと当時の面影が残っている。


「お、お母さん……」


 彼女は十二年前に父と六花を置いて出て行った実の母、冬実(ふゆみ)だった。

 冬実は両手を口元に当て、驚きを隠せないと言わんばかりに六花を見つめる。


「本当に六花なの……?」


 よろよろとどこか覚束ない足取りで一歩ずつ六花に歩み寄る冬実。
 声を震わせ、瞳を潤ませながら笑みを浮かべる。


「久しぶりね……こんなに大人になって。ずっと会いたかった」
「……会いたかった?」


 六花は自分の口から出たとは思えない程低い声が出た。


「どうしてそんなことが言えるの?」


 十二年ぶりに再会した母をキッと睨み付ける。


「お父さんが亡くなった時も顔を出さなかったくせに、よくそんなことが言えるね?」


 ああダメだ、と六花は思った。
 感情が抑えられない。

 感情の赴くままに刺々しい言葉から次々と出てしまう。
 冷静にならなきゃいけないと頭ではわかっていても、口は止まってくれなかった。


「今まで私がどんな思いで生きてきたと思ってるの……っ」
「六花……」


 冬実は今にも泣き出しそうな、悲しそうな表情で六花を見つめていた。
 泣きたいのはこちらだよ、と思った。


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