同棲中彼は、顔だけかも、しれない。
 「今、ヤバいのと目が合ったんだけど……」

 流し下の引き出しを開けて、直ぐに閉めた私の声は震えていた。
 居間のコタツでTVを観る彼氏、アタルは「Gかよ?」と呑気に言ったが、そんなもんじゃない。

 「ネズミよ!」

 生まれて初めて見た。
 引き出しから鍋を取り出すつもりだったのに、恐怖で動けなかった。
 そんな私の横で室内犬のシバが吠える。

 「どうりで最近、シバが夜中にここらで動き回ってるな、と思ったのよね」

 「じゃあシバが仕留めてくれんだろ?」

 無職でずっと昼寝してる癖に、夕方でも欠伸をするアタル。
 
 「猫じゃないっつーの。 それに鼠は病気持ってるんだから! シバが感染したらどうするのよ」

 私の訴えも響かず、寝転がってゲームを始めやがった。

 「うっせぇな、鼠なんかハムスターだと思えば可愛いもんだろ」
 
 「だから病気! ペストも鼠が広めたんだからね!」

 「じゃあ薬でも撒いとけばいいんじゃね?」

 「殺鼠剤はシバが危ないでしょ?」
 

 
 


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