同棲中彼は、顔だけかも、しれない。
 「お疲れ様でしたー」「お疲れー」
 
 作業員が帰っていく中で、だらだらと身支度をする私。
 とりあえず今夜だけ会社に泊めて貰えないか社長にお願いするタイミングを見計らっていたのだ。
 よし。
 やっと二人きり。
 
 「社長 」

 ん? と、PCから私に視線を移した社長の片手には電子煙草。この人、夕方になると事務所でも喫煙始めるんだよね。
 
 「実はお願いがありまして」

 厚かましいと分かってはいても、ただで雨風しのげる場所はここしかない。
 何より作業員の為のシャワーもあるし。
 
 例のない事なのでダメかも、と期待はしてなかったのだが、お願いしてみると、

 「いいよ」

  と承諾してくれた。

 
 だけど。

 「じゃ、結依ちゃん、明日ね」「はい、お疲れ様でしたー」

 社長が帰ろうとして、会社の入口でハタ、と足を止めた。

 「本当に大丈夫、……かな」
 「え?」

 その時、私は応接室のソファーでブランケットをかけて寝よう、とかすっかり泊まる気満々でいたのだが、

 「ここ、警備保障にも入ってないし、寝具はないし、女の子が一人で寝るに適さないよね」

  ″女の子 ″という社長の言葉に擽ったさを覚えつつ、やっぱりダメなのかと不安になった。

 

 
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