あの人に会いにいく。
「おい、京ちゃん帰っちゃうのかよ!」

「今抜け出さないと終電に乗り遅れるかもしれねぇだろ」

「だからって俺を置いてくの!? ひどいっ!」

 被害者ぶる坂下に苛立ちを感じ、二度目は流石に無視をした。そもそも、俺がこのうるさすぎる会に自ら参加するわけがない。
 昔から騒がしいのは人一倍だいきらいだ。今回は坂下にどうしても連れて行きたいところがあると言われたから来たのだ。

 目的地を教えてくれなかったので、何か裏があるとは思っていたが、坂下を信じてやったっつぅのに。

 居心地の悪さからネクタイを緩めて、ドアノブに手を掛けると俺が開ける前に扉が開く。どうやら扉を開けたのは渡辺らしく、手元には炭酸飲料を満杯に入れたのか嬉しそうに笑っている。
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