あの人に会いにいく。
「あ、神崎先輩! もう帰るんですか?」


「……まぁな、終電乗り遅れてもめんどくせぇし。渡辺も試合近いんだろ? 気をつけて帰れよ」


「そーですね! 先輩方が残した結果よりも大きな結果を残して見せますよ!」


 ニカッと綺麗な白い歯を見せて笑った渡辺は、俺に手を振りながら扉を閉める。室内から「京ちゃあーん」と俺の名前を呼ぶ坂下の声が聞こえ、鳥肌が立ちその場をすぐに後にした。


 外へ出ると、ひんやりとした冷たい風が頬を触った。痛いぐらいの冷たい風に、体が驚くのを感じる。


 そして外の世界を見渡すと、キラキラとした眩しいもので溢れていた。住宅街の灯り、消えることない街の光、チラホラと見てるクリスマスツリーの輝き。


 楽しそうに笑う家族連れや、幸せな顔を浮かべるカップルが何組も。

< 11 / 28 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop