あの人に会いにいく。
「俺、今はサッカーだけに集中したいんっすよ。気持ちは嬉しかったし、告白されて意識しちゃいますよ? ただサッカーも大切だから……。俺には恋愛と部活を同時進行で大切にするのは難しいんですよ」


 渡辺はサッカー部の中で上位ランクに入るほど上手い。それに根が真面目なヤツだから、唯一信頼もできる。


「だからってあんな美人な子を断る理由にはならねぇだろ。はぁ、俺だったら即OKするよ」


「いやいや。坂下先輩の女たらしには敵いませんよ」


 炭酸飲料をゴクゴクと飲み干した渡辺は、「俺、もう一杯入れてきます」と一言告げて室内から出る。


 そして視線を辺りに向けると、他のサッカー部後輩たちはまた別の話で盛り上がっているのか、楽しそうに笑っていた。


 坂下もその輪に入ろうとしたけど、俺の方をチラリと見れば近くに寄ってきた。
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