海棠/カイドウ〜哀をなくした不遜な軍師と、愛しき共謀者が綴る備忘録〜
こうなれば―⋯商の将来性と物流のプロであることを見込み、見切り発進といこうじゃあないか。
私は先ほど有昧后に伝えた麻の活用法に加え、今ある資源を最大限に利用するように丁寧に、的確にその効果を知らせていく。
「石鹸技術も応用しましょう。木材や土器に獣脂と石灰―⋯。ええと、燭陰の熱で焼かれた貝殻や、石灰岩のことです。それらを混ぜたものを塗り込んでください。現代のコンクリートやシーリング材⋯いえ、水を弾き朽ちない、強力な防水材で堤防の決壊を防ぎます。あの者たち―⋯獯鬻の使っている蛇のような杭に脂を塗れば、土の中へ刺す際の摩擦を減らし、より簡単に打ち込めるかもしれません。人材を増やし一気にやりましょう。契さん、麻や石鹸や先ほどの飲み物の製造と運搬と共に、道具の供給など―⋯一手に担い、采配を」
契は黙って一通りを聞き終えると、私の説明を自身で噛み砕いて、順を追い、端的に言葉にしていく。
「シゴデキの真骨頂だ―⋯」
その、流れるような人員采配と作業効率。滞りのない物流。
「アマ◯ンもビックリの管理力ですね、契さん」
「⋯あまぞん?」
「ところで⋯、この【商】の旗は、貴方の方国を象徴なさっているのですか?それとも⋯屋号?」
「やごう?さて⋯その意は知らぬが、何処かの【国】では、物と物とを交換し稼ぎを得ることを【商い】というのだそうだ。この【商】を掲げれば―⋯それができる場であると、遠くから見てもわかるであろう?だからこれを記し掲げている」
「⋯⋯⋯」
何処かの国って。もしかして―⋯
「契さん。もしや有昧后に聞いた話では?」
「さよう」
この時代に、商いだとか商人なんて概念もないはずだ。なぜならば⋯未来の【商】に生きた者が、売買して生き抜く様から生まれた言葉だからだ。
つまり―⋯
かつて私が有昧后に話したことが契に伝わって、その概念の先取りしちゃったってことか!!
「つまりのところ⋯、看板であり、屋号になっちゃったっていう話?」
「⋯?そなたの言う、その【かんばん】【やごう】なるものは―⋯どういったものなのだ?」
「その、商いをするお店に名をつけて、掲げる印のようなものです」
「なるほど。では―⋯我々の屋号とやらは【商】。商いの屋号が商という面白い事態であるのだな」
「⋯⋯⋯」
あっけらかんと、何の躊躇もなく受け入れる姿勢。むしろ楽しんでいるかのような余裕と余白のある―⋯性格。
「【にほん】という【国】から来た人間とは、そなたのことであるな?海棠。有昧伯が背中を預ける女子などこれまでただの1人も存在したことがない。私は―⋯戦は好まない。が、人と人との関係性を重んじる。微力ながら協力させて頂こう。そなたという価値を見出した有昧伯の、その信用に足る者なのか―⋯見物しようじゃあないか」
高みの見物をし、私を値踏みするということか。
なんていう⋯ストレートな宣言。
腹の底こそ読めないけれど、親しみやすさと商人気質を兼ね揃えた人たらし⋯。
北溟の地獄のような阿鼻叫喚の中に―⋯1つの希望の花が咲くかの如く。
この、【契】という華やかな男の存在は⋯際立っていたのであった。
私は先ほど有昧后に伝えた麻の活用法に加え、今ある資源を最大限に利用するように丁寧に、的確にその効果を知らせていく。
「石鹸技術も応用しましょう。木材や土器に獣脂と石灰―⋯。ええと、燭陰の熱で焼かれた貝殻や、石灰岩のことです。それらを混ぜたものを塗り込んでください。現代のコンクリートやシーリング材⋯いえ、水を弾き朽ちない、強力な防水材で堤防の決壊を防ぎます。あの者たち―⋯獯鬻の使っている蛇のような杭に脂を塗れば、土の中へ刺す際の摩擦を減らし、より簡単に打ち込めるかもしれません。人材を増やし一気にやりましょう。契さん、麻や石鹸や先ほどの飲み物の製造と運搬と共に、道具の供給など―⋯一手に担い、采配を」
契は黙って一通りを聞き終えると、私の説明を自身で噛み砕いて、順を追い、端的に言葉にしていく。
「シゴデキの真骨頂だ―⋯」
その、流れるような人員采配と作業効率。滞りのない物流。
「アマ◯ンもビックリの管理力ですね、契さん」
「⋯あまぞん?」
「ところで⋯、この【商】の旗は、貴方の方国を象徴なさっているのですか?それとも⋯屋号?」
「やごう?さて⋯その意は知らぬが、何処かの【国】では、物と物とを交換し稼ぎを得ることを【商い】というのだそうだ。この【商】を掲げれば―⋯それができる場であると、遠くから見てもわかるであろう?だからこれを記し掲げている」
「⋯⋯⋯」
何処かの国って。もしかして―⋯
「契さん。もしや有昧后に聞いた話では?」
「さよう」
この時代に、商いだとか商人なんて概念もないはずだ。なぜならば⋯未来の【商】に生きた者が、売買して生き抜く様から生まれた言葉だからだ。
つまり―⋯
かつて私が有昧后に話したことが契に伝わって、その概念の先取りしちゃったってことか!!
「つまりのところ⋯、看板であり、屋号になっちゃったっていう話?」
「⋯?そなたの言う、その【かんばん】【やごう】なるものは―⋯どういったものなのだ?」
「その、商いをするお店に名をつけて、掲げる印のようなものです」
「なるほど。では―⋯我々の屋号とやらは【商】。商いの屋号が商という面白い事態であるのだな」
「⋯⋯⋯」
あっけらかんと、何の躊躇もなく受け入れる姿勢。むしろ楽しんでいるかのような余裕と余白のある―⋯性格。
「【にほん】という【国】から来た人間とは、そなたのことであるな?海棠。有昧伯が背中を預ける女子などこれまでただの1人も存在したことがない。私は―⋯戦は好まない。が、人と人との関係性を重んじる。微力ながら協力させて頂こう。そなたという価値を見出した有昧伯の、その信用に足る者なのか―⋯見物しようじゃあないか」
高みの見物をし、私を値踏みするということか。
なんていう⋯ストレートな宣言。
腹の底こそ読めないけれど、親しみやすさと商人気質を兼ね揃えた人たらし⋯。
北溟の地獄のような阿鼻叫喚の中に―⋯1つの希望の花が咲くかの如く。
この、【契】という華やかな男の存在は⋯際立っていたのであった。