海棠/カイドウ〜哀をなくした不遜な軍師と、愛しき共謀者が綴る備忘録〜
「取らぬ狸の皮算用」と言うではないか。
あれこれと利益や体面を気にするのは私の役割でもなければ―⋯

契や驍大人のような者たちに敵う筈がない。


「⋯契さん。もう遠慮はしません。今は状況を打破することが先です、ご協力を」

「はじめからそのつもりだ」

美しい垂れ目が、綺麗な弧を描いて―⋯笑っている。その距離―⋯、非常に近し。


すると、だ。

「海棠」
浮游が、その間から―⋯腕をのばし。その大きな手で、私の衿元の合わせを器用にスッと直すと。

相変わらずの無表情で、急に襟首をぐいんと引っ張って―⋯歩いていく。

この妙な矛盾行動は、一体何なんだと思いつつ⋯ずるずるとその場から連れられていくのだった。

「こちらは私に任せよ。何でも申せ!知首の命通り、滞りなく、全てを完璧にやり遂げてみせよう」

「あーあー、もう黙れ。頼むから早く行かせてやってくれ」

契さんと驍大人の見送る声が―⋯背後から届いた


< 136 / 178 >

この作品をシェア

pagetop