海棠/カイドウ〜哀をなくした不遜な軍師と、愛しき共謀者が綴る備忘録〜
「もうひとつは―⋯、そもそも冥界の死者の魂が、それを受け入れるのか否か」
あさっての方向から、別の声がして⋯、私たちは、その声の主へと⋯振り返った。
「そう言いたかったのでは?有昧伯」
―⋯博益であった。
「獯鬻の者たちの働きで、無事氾濫の危機は乗り越えた。海へと流し⋯ひとまず治水の成功だ」
「良かった⋯!」
私は心底、ホッとする。一番の難点であり、最大の危機が⋯去った。必死に抵抗し、無念にも北溟に散った、死者の魂が―⋯少しでも安らげればいい。
「とんでもない者たちを連れてきたな。まさか、協力することになるとは―⋯」
「何か、不都合でもあるか?」
有昧后が、すかさず意地の悪い質問をする。
「⋯⋯。いいや、功績を称えるべきだ」
博益は、懐から竹簡を取り出すと。削刀で何か文字を彫ろうとする。
私は、男たちのくだらない駆け引きを横目で見ながら⋯ハッと気づく。
「博益!ちょうどよかった」
「ん?どうした、海棠」
「次の策は、かなり広範囲に渡り、大規模になる。おまけに、知っての通り―⋯様々な勢力が関わってくる事業とも言える」
「⋯うん?」
「中原にきっと知れ渡るでしょう?だったら先手必勝で、博益、禹后の許可を」
と、ここで。博益の手元から、竹簡がバラバラになって⋯地面に散らばっていった。
「それよりも海棠。これをどうにかしてくれ」
「⋯⋯⋯。」
「天からの忠告か?知らせてはならぬ、と」
「⋯⋯博益⋯。貴方、案外抜けてるよね」
私はバラバラになった、竹を集めると⋯繋いでいた紐の切れ目をチラリ、と確認する。
(意図的に⋯切ったんだな)
とんだ―⋯茶番劇である。
あさっての方向から、別の声がして⋯、私たちは、その声の主へと⋯振り返った。
「そう言いたかったのでは?有昧伯」
―⋯博益であった。
「獯鬻の者たちの働きで、無事氾濫の危機は乗り越えた。海へと流し⋯ひとまず治水の成功だ」
「良かった⋯!」
私は心底、ホッとする。一番の難点であり、最大の危機が⋯去った。必死に抵抗し、無念にも北溟に散った、死者の魂が―⋯少しでも安らげればいい。
「とんでもない者たちを連れてきたな。まさか、協力することになるとは―⋯」
「何か、不都合でもあるか?」
有昧后が、すかさず意地の悪い質問をする。
「⋯⋯。いいや、功績を称えるべきだ」
博益は、懐から竹簡を取り出すと。削刀で何か文字を彫ろうとする。
私は、男たちのくだらない駆け引きを横目で見ながら⋯ハッと気づく。
「博益!ちょうどよかった」
「ん?どうした、海棠」
「次の策は、かなり広範囲に渡り、大規模になる。おまけに、知っての通り―⋯様々な勢力が関わってくる事業とも言える」
「⋯うん?」
「中原にきっと知れ渡るでしょう?だったら先手必勝で、博益、禹后の許可を」
と、ここで。博益の手元から、竹簡がバラバラになって⋯地面に散らばっていった。
「それよりも海棠。これをどうにかしてくれ」
「⋯⋯⋯。」
「天からの忠告か?知らせてはならぬ、と」
「⋯⋯博益⋯。貴方、案外抜けてるよね」
私はバラバラになった、竹を集めると⋯繋いでいた紐の切れ目をチラリ、と確認する。
(意図的に⋯切ったんだな)
とんだ―⋯茶番劇である。