海棠/カイドウ〜哀をなくした不遜な軍師と、愛しき共謀者が綴る備忘録〜

第23話 空征くタクト〜知首の戦線再編〜

私は、上空を大きく旋回しながら―⋯この状況を一気に把握していく。

まず急務は、この川を―⋯一次的に堰き止めるか導水して、完全に干上がらせることだ。

「前衛、獯鬻の勇者達に告ぐ!この度の氾濫への対応と治水の成功は貴方がたの尽力があってこそ。けれど―⋯未だ事態は好転せず、今度は燭陰の熱を流すための土台を造って欲しい」

私は、有昧后が描いた螺旋を示して―⋯

「この印の場所を深く掘り、地下に続く忘川、そして―⋯この鐘山の奥底にある冥界へと熱を運ぶ。有昧と商が青銅の管を用意できるまでに、早急にその道を造る。まずは―⋯火焼開山!川を干上がらせる為の治水を」

燭陰の熱で、山々の雪や―⋯万年氷すらも溶けて泥流となった。ならば。それを逆手にとって―⋯道なき道を拓く。

山々を焼き岩を熱して、水をかければ―⋯その岩は脆くなる。

岩を穿ち、いくつもの伏流を造って―⋯遊水地へ流す。

横軸ではなく縦軸に考えよ。有昧后が言っていた意味は―⋯

忘川は有昧にあるという固定観念からの解放だった。

有昧を流れ―⋯その下流は緩やかに地下へと続いていく。歩いて行く者は、その間に記憶を無くし―⋯知らず知らずのうちに終着地である冥界へと導かれていく。

その場所こそが、この―⋯北の地。

日も当たらぬ最果ての地、鐘山の奥底に―⋯存在していたのだ。

流石に理解が早い。

耒を握りしめた男たちは一斉に―⋯岩を、土を、威勢よく穿ちはじめた。

「一目国の者は、その千里眼で導水箇所を探し当てて欲しい」

地形を見誤れば―⋯上手くはいかない。闇雲に崩壊させては、本流に大きな影響を与える。

一目国の者達は、鋭利な1つのその目線を―⋯まるで的を狙うかのように。

一点集中させて躍動する。

それから私は―⋯契さんのいる陣営へと、向かう。

青いこの鳥は、契さんを思い描いたその瞬間にー⋯行き先を理解したようだった。

まるで自動運転状態だ。

「もう既に働き通しであることは承知の上ですが、石鹸の生産と同時に、灰と脂の配合を試し、強固なシーリング材―⋯いえ、充填剤を造って欲しいです。出来上がった青銅管の継ぎ目を補強し、熱や冷気に耐える設計に。それから―⋯縫って作った麻袋には土砂を入れて、目立つ所にまとめて置いてください」

博益を通し、鳥たちが―⋯この土砂入り麻袋を、空から投下していく。

川の流れを誘導する、微調整用のアイテムだ。

気づけば契さんは彼の言葉通りにー⋯石蜜と塩入りの経口補助液を現場の者達ヘと運んでいた。

目の見える外傷に限らず、体力と健康面への助力。衛生班医療班は、トリアージの傍らで⋯メディカルチェックも忘れない。

(ここは⋯もう契さんや福に全てを託そう)

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