海棠/カイドウ〜哀をなくした不遜な軍師と、愛しき共謀者が綴る備忘録〜
黄金の光が空を焦がした次の瞬間には、陸吾の身体はすでに北の方角へと傾いていた。彼は葆江の遺体に触れることすらしない。現場の状況をそのまま保存し、西王母がここに到達した時にすべての証拠を見せるためだ。そして―⋯同時に秘匿のルートを隠蔽すべく、猶予を作り出した。
「逃がさぬ」陸吾の瞳が、北の空、鐘山の方角へと流れていく不浄な魔気を捉えた。彼は地面の岩を粉砕せんばかりの勢いで蹴り上げると、自らも一筋の白い雷光と化して、最北の地へと爆発的な速度で飛び立った。悲劇の現場には、ただ主を失った肉芝の甘い香りと、西王母の元へ急ぐ光の尾だけが取り残されていた。
そして―⋯呆気なく、その真相は解明された。
陸吾が捕らえた男たちは、北の神燭陰の尾の元で、藻掻き苦しんでいた。肉芝を食した代償であり⋯それこそが動かぬ動機と証拠であった。
西王母から知らせを受けた天帝は―⋯未曾有の事件とこの顛末に怒り狂い、その犯人であった鼓と欽鴀に不当に不老不死の力を得ようとした罪と、同族殺しの罪で断罪。
鼓の父である燭陰の目の前―⋯鐘山の東側の瑤崖にて、処刑した。
燭陰は、どんな思いでそれを見ていたのか。ただ―⋯微動だにせず、この顛末をじっと見据えているだけであった。
皮肉にも―⋯彼らは食していた肉芝の霊力に侵されていて。その元神は凶獣としてその場で再生されてしまう。
燭陰の息子、鼓は⋯大旱魃を引き起こす鵕鳥として。
彼を唆し共謀させた欽鴀は⋯戦争を引き起こす大鶚として、共に凶獣として転生したのだった。
一方で、魂飛魄散した葆江は、その生を絶たれた後―⋯その遺体の行方は、埋葬された場所すらも、知る者は居なかった。
不運たる神の―⋯その理不尽な死を弔う機会を与えられることもなく、闇に葬むられた。
事件に間接的に関与する西王母さえ―⋯知らぬのだ。
「逃がさぬ」陸吾の瞳が、北の空、鐘山の方角へと流れていく不浄な魔気を捉えた。彼は地面の岩を粉砕せんばかりの勢いで蹴り上げると、自らも一筋の白い雷光と化して、最北の地へと爆発的な速度で飛び立った。悲劇の現場には、ただ主を失った肉芝の甘い香りと、西王母の元へ急ぐ光の尾だけが取り残されていた。
そして―⋯呆気なく、その真相は解明された。
陸吾が捕らえた男たちは、北の神燭陰の尾の元で、藻掻き苦しんでいた。肉芝を食した代償であり⋯それこそが動かぬ動機と証拠であった。
西王母から知らせを受けた天帝は―⋯未曾有の事件とこの顛末に怒り狂い、その犯人であった鼓と欽鴀に不当に不老不死の力を得ようとした罪と、同族殺しの罪で断罪。
鼓の父である燭陰の目の前―⋯鐘山の東側の瑤崖にて、処刑した。
燭陰は、どんな思いでそれを見ていたのか。ただ―⋯微動だにせず、この顛末をじっと見据えているだけであった。
皮肉にも―⋯彼らは食していた肉芝の霊力に侵されていて。その元神は凶獣としてその場で再生されてしまう。
燭陰の息子、鼓は⋯大旱魃を引き起こす鵕鳥として。
彼を唆し共謀させた欽鴀は⋯戦争を引き起こす大鶚として、共に凶獣として転生したのだった。
一方で、魂飛魄散した葆江は、その生を絶たれた後―⋯その遺体の行方は、埋葬された場所すらも、知る者は居なかった。
不運たる神の―⋯その理不尽な死を弔う機会を与えられることもなく、闇に葬むられた。
事件に間接的に関与する西王母さえ―⋯知らぬのだ。