海棠/カイドウ〜哀をなくした不遜な軍師と、愛しき共謀者が綴る備忘録〜
そうすると―⋯更に。

この2重にする意味とは?

管の断面を再度眺める。

二重の同心円に見えるこれは―⋯入口がパテで密閉されている。

つまり―⋯この2つの管の間に隙間があるということか?

コレを現代に置き換えよう。似たような構図―⋯似たような構造―⋯。

「うーん」

あらゆる角度から眺め、考えをぐるぐると巡らせていると。

契が「まあまあ、そう思い悩まずに」とサッと木の椀を差し出してきた。

その椀からは⋯ほんのり甘酸っぱい、香ばしい大地の匂いが湯気と共に運ばれてくる。

「お茶ですか? 変わった匂いですね」

酸棗仁(さんそうにん)といって野生のナツメの種を煎じたものだ。高ぶった気を鎮め、泥のように眠れる薬効が。もう少し肩の荷を下ろし、周囲に任せてみては?四六時中、アレコレ考えずに」

「⋯⋯」

人の性質を見破ることに長けるのか?それともただただ風雅であるのか?

契は、石蜜と塩の白湯を淹れた時の薄造りの黒陶ではなく、温もりある木の椀を用意してくれている。

前回の、あの火傷しそうな熱さのことも―⋯考慮したのか?

念の為ふーっと息を吹きかけ、少しばかり冷ます。

「へえ……あ、本当だ。なんか、すっと落ち着くかも」

一口飲んで―⋯ホッとする。

するとどうだ?さっきまでもやもやしていた思考が、ふっと突然の閃きへと直結していったのだった。

木の椀―⋯。そう、熱くても、それを防いでくれる素材―⋯。

「⋯⋯!!魔法瓶だ!真空断熱―⋯!」

そう。あの青銅パイプの仕掛けは―⋯真空を作り、熱の伝導を抑えること。

道理はわかる。燭陰の灼熱のような熱が、絶対零度のような冥界の冷気に直接触れたらどうなるか?

答えは、水蒸気爆発だ。鐘山もろとも、仲間達も皆―⋯消えてしまう可能性が。

一気に冷静になって、スー⋯と背筋に悪寒が走ったのであった。

有昧后が、私の策が欠陥だらけだと言ったのは⋯

単純に、命を投げ出すような愚策であったからだ。

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