海棠/カイドウ〜哀をなくした不遜な軍師と、愛しき共謀者が綴る備忘録〜
いよいよか―⋯、と大きく深呼吸した所で。
上空に大きな2つの影が飛来して来た。またどこからか凶獣が来たのだろうと、見上げると⋯。
一匹は見覚えある⋯鳥であった。
白い頭。黄色の模様に、真っ赤な足。
「ああ、シュンだ」
博益の呟きに⋯ハッとする。
(燭陰の息子―⋯)
この者がここを飛び回ることは、即ち父である燭陰の蓄熱が、更なるオーバーヒートを引き起こすかもしれない。
「心配で見に来たのであろう」
どこまで優しく広い心を持っているのか。博益の寛大さを⋯到底理解はできない。
「博益。では⋯もう一羽、あの鳥は?」
シュンにも似たような、猛禽類の類であろう。
白い頭に、赤い嘴、羽には黒の斑紋。
不気味なことに、その足は。鳥のもの、その形を成していない。
虎のような爪を持つ、ひと目で凶獣であろうと窺い知れる風貌だった。
兵士たちが⋯ざわめく。
「無理もない。あれは⋯大鶚。今最も目にしたくない者であろう」
「⋯なぜ?」
「戦を予兆する凶獣だ。いずれここにいる者たちの住むどこかで、戦が起きる。大鶚と目が合った者は、魂を直接、鋭利な爪で掻き毟(むし)られるような錯覚に陥る。その瞳の奥には、彼が司る『戦乱の呪い』が渦巻いており、見つめられ続けるだけで、頭の中に無数の兵士の悲鳴と、血の海に沈む戦場の幻影が強制的に流れ込んでくるのだ。絶対に目を⋯合わせるな」
「⋯⋯!」
「けれど今はそれよりも。なぜ⋯死してなお、鼓に纏わりついているのだ?」
「⋯?」
「前に言ったであろう。シュンは元々は神であり、燭陰の息子の鼓であると。大鶚もまた、元は神であり、鼓と共謀して大罪を犯した者だ」
「なら、天帝に処罰されて?」
「さよう」
「じゃあ、またこの2人が⋯」と、言いかけた時だった。
ヒュン、と―⋯空を斬るような音が一瞬響いたかと思うと。
その一羽、大鶚の身体は大きく傾き⋯その巨体が、穴のすぐ側の地へと轟音を立てて叩きつけられたのだった。
上空に大きな2つの影が飛来して来た。またどこからか凶獣が来たのだろうと、見上げると⋯。
一匹は見覚えある⋯鳥であった。
白い頭。黄色の模様に、真っ赤な足。
「ああ、シュンだ」
博益の呟きに⋯ハッとする。
(燭陰の息子―⋯)
この者がここを飛び回ることは、即ち父である燭陰の蓄熱が、更なるオーバーヒートを引き起こすかもしれない。
「心配で見に来たのであろう」
どこまで優しく広い心を持っているのか。博益の寛大さを⋯到底理解はできない。
「博益。では⋯もう一羽、あの鳥は?」
シュンにも似たような、猛禽類の類であろう。
白い頭に、赤い嘴、羽には黒の斑紋。
不気味なことに、その足は。鳥のもの、その形を成していない。
虎のような爪を持つ、ひと目で凶獣であろうと窺い知れる風貌だった。
兵士たちが⋯ざわめく。
「無理もない。あれは⋯大鶚。今最も目にしたくない者であろう」
「⋯なぜ?」
「戦を予兆する凶獣だ。いずれここにいる者たちの住むどこかで、戦が起きる。大鶚と目が合った者は、魂を直接、鋭利な爪で掻き毟(むし)られるような錯覚に陥る。その瞳の奥には、彼が司る『戦乱の呪い』が渦巻いており、見つめられ続けるだけで、頭の中に無数の兵士の悲鳴と、血の海に沈む戦場の幻影が強制的に流れ込んでくるのだ。絶対に目を⋯合わせるな」
「⋯⋯!」
「けれど今はそれよりも。なぜ⋯死してなお、鼓に纏わりついているのだ?」
「⋯?」
「前に言ったであろう。シュンは元々は神であり、燭陰の息子の鼓であると。大鶚もまた、元は神であり、鼓と共謀して大罪を犯した者だ」
「なら、天帝に処罰されて?」
「さよう」
「じゃあ、またこの2人が⋯」と、言いかけた時だった。
ヒュン、と―⋯空を斬るような音が一瞬響いたかと思うと。
その一羽、大鶚の身体は大きく傾き⋯その巨体が、穴のすぐ側の地へと轟音を立てて叩きつけられたのだった。