海棠/カイドウ〜哀をなくした不遜な軍師と、愛しき共謀者が綴る備忘録〜
あとは鐘山(地上)に戻って、すぐにでも着工して⋯。

「ん?どうやって戻るの?というか、どうやってここに来たんだっけ。まさか⋯歩いて?!」

ここで、私は初めてゾッとするのであった。なぜなら⋯忘川を渡る行為ほどに恐ろしいものはない。有昧后が雑巾がけをやめない理由は、私が先ほど一部の記憶を失ったからであろう。

ここでまた川に触れてしまえば。

下手すれば⋯自我さえ失くしてしまう可能性があるのではないだろうか。

すれ違う死者の―⋯虚ろが表情が。【何も見ず】、【何も考えず】、ただひたすら歩む姿が。

その怖さを―⋯際立たせていた。

「⋯⋯。役に立たぬ者は、捨て置く」

途端に、有昧后が私の背に鎮座していた【シマエナガ】を片手でむんず、と掴み取る。

ピーッ!!と悲痛な鳴き声が響き渡ったかと思うと―⋯。

一瞬にしてラピラズリのような蒼き羽をバサバサッと忘川の上空いっぱいに広げて。元来の瑞鳥?であるその姿へと変貌を遂げたのであった。

青鳥(せいちょう)よ。お前は本来の性分は忘れてはいまい?故郷に戻りたくば、まずは鐘山へと同行せよ」

(あ。今【蒼鳥】と呼んだ。私の命名そのままが正解だったのか)

いや。それよりも―⋯このコをアシに使うだなんて。途中で縮小化しちゃわない?


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