海棠/カイドウ〜哀をなくした不遜な軍師と、愛しき共謀者が綴る備忘録〜
有昧后は全く意に返さずに、私を肩に乗せたまま蒼鳥へと飛び乗ると。その背に、ぽいっと私を放り投げた。蒼鳥の柔らかくも筋肉質な身体が、ボイン、と一瞬身体を跳ね上がらせて⋯バランスを崩すものの、後から乗ってきた博益が手を掴んでそれを防いでくれる。

そして⋯

有昧后は「翳大宰」と、ひと声掛けると。

己の袂から何かを取り出し、それを翳大宰に向かって投げたのであった。

「博益、今、有昧伯は何を?」

「さあ⋯私にも判らぬ」

(⋯⋯?)

呑気にも大きく手を振る幽都大帝と、ひとつ頷き⋯黙してこっちを見つめる翳大宰に別れを告げて。

私たちは、冥界の入口―⋯、忘川の終着地を後にしたのだった。





< 178 / 213 >

この作品をシェア

pagetop