海棠/カイドウ〜哀をなくした不遜な軍師と、愛しき共謀者が綴る備忘録〜
動きやすさを重視した、無駄な装飾のない衣。しかし、その裾や帯には、世界の境界線や測量のための「目盛り」を模したような、幾何学的で不気味なほど美しい紋様が密かに刺繍されている。手には、大地に突き立てて距離を測るための、算木(※計算用の棒)。

(⋯⋯⋯)

頭の中をグルグルとさせて、自分の立ち位置と振る舞いを考慮して、攻略法やら戦術を組み立てようとして。

けれど⋯堂々巡りをして。

辿り着いた第一声は、

「貴方は―⋯理想の衣を着てる」

と、ズバッと。これであった。

禹后がこの者(豎亥)を監視役につけた、という直感。その警戒を無力にする為に狙ったものではない。

いわゆる、ただの【本心】だ。

けれどこのやり取りを⋯遠くから見守るようにして見つめていた福は、耳をピクリとさせて。

安堵するのだった。

こっそりとこの旅を追いかけようと思っていたが、意外な監視者が現れた。福の存在は、海棠と有昧との関係を禹后に知られる足掛かりとなってしまう。

心底、海棠を案ずる福であったが―⋯。当の本人も、博益も、動じるどころかアッサリ受け入れているのだ。

豎亥の存在は、是が非でも同行したかった福がすぐさま有昧へ戻るきっかけを与えた。そして⋯ちょっぴり後ろ髪がひかれる思いを抱えつつも、静かにその場を去っていくのだった。

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