海棠/カイドウ〜哀をなくした不遜な軍師と、愛しき共謀者が綴る備忘録〜
そんなこんなで。
本日、私は初めて⋯有昧の邑の市を堪能している。
有昧の、と、ある納屋に閉じ込められて数日間。できたことは、福と語らうことと、ある食材談義から⋯料理研究に勤しむこと。
滞在する納屋は工房へと化して。その息抜きは⋯小さな庭を散歩することくらい。
それくらいであった。
私の近況は全て王に報告されるらしく、いよいよただの怠惰な人間であると⋯わかってくれたのであろう。警戒を解き、邑を歩くことを⋯許された!と、勝手にそう思っている。
そうならば、今日から⋯、今日こそ、夏王朝における文化を⋯世界初、この目見て触れることができる、チャンスなのだ。
聞けば、有昧王は軍の運営に関わる全てを自分のお金?で賄っているのだ、と福は言う。更に、食事も不足せぬよう福に命じて準備させている。つまりは⋯その福の助手として、私を利用し始めたのかもしれない。
それくらいしか役に立てぬだろうと見越して⋯きっと馬車馬のように働かせるに違いない。非道な⋯軍師め。
「男気があるんだね」と、取りあえず心にもないことを言ってみる。
自分に不利になる発言は⋯控えねば、彼の信頼を得ることはできないのだから。
「そうであろう?」
君主を信じる臣下の瞳は、それはそれは⋯眩しいものだった。
それにしても⋯、だ。
夕刻の時とは、うってかわった空気。
この谷に太陽の光が届く時間は⋯、こうして人々が募って賑わっているのだから。何処をどう見たって、人間の生活⋯そのものだ。時代劇の、平和な日常を切り取ったかのような光景。露店もあれば、歩き食べをする者も。
「こうなってくると、仙人が霞を食べて生きているって、大嘘だな」と、ついうっかり、そんな不遜なことを口走ってしまうのだった。
霞が何かも知らない、というのに。
「何言ってんだ?姑射の山の者なら、霞を飲むぞ?」
不意に放たれた、福の毒舌砲。
「⋯⋯黙って、福」
「ん?なんだ、その不遜な態度は」
そう。人間界ではなかったのだ。頭では理解しているはずなのに、情報を処理しきれていない。
だから⋯いとも簡単に、バグ(ミス)を犯すのだ。
本日、私は初めて⋯有昧の邑の市を堪能している。
有昧の、と、ある納屋に閉じ込められて数日間。できたことは、福と語らうことと、ある食材談義から⋯料理研究に勤しむこと。
滞在する納屋は工房へと化して。その息抜きは⋯小さな庭を散歩することくらい。
それくらいであった。
私の近況は全て王に報告されるらしく、いよいよただの怠惰な人間であると⋯わかってくれたのであろう。警戒を解き、邑を歩くことを⋯許された!と、勝手にそう思っている。
そうならば、今日から⋯、今日こそ、夏王朝における文化を⋯世界初、この目見て触れることができる、チャンスなのだ。
聞けば、有昧王は軍の運営に関わる全てを自分のお金?で賄っているのだ、と福は言う。更に、食事も不足せぬよう福に命じて準備させている。つまりは⋯その福の助手として、私を利用し始めたのかもしれない。
それくらいしか役に立てぬだろうと見越して⋯きっと馬車馬のように働かせるに違いない。非道な⋯軍師め。
「男気があるんだね」と、取りあえず心にもないことを言ってみる。
自分に不利になる発言は⋯控えねば、彼の信頼を得ることはできないのだから。
「そうであろう?」
君主を信じる臣下の瞳は、それはそれは⋯眩しいものだった。
それにしても⋯、だ。
夕刻の時とは、うってかわった空気。
この谷に太陽の光が届く時間は⋯、こうして人々が募って賑わっているのだから。何処をどう見たって、人間の生活⋯そのものだ。時代劇の、平和な日常を切り取ったかのような光景。露店もあれば、歩き食べをする者も。
「こうなってくると、仙人が霞を食べて生きているって、大嘘だな」と、ついうっかり、そんな不遜なことを口走ってしまうのだった。
霞が何かも知らない、というのに。
「何言ってんだ?姑射の山の者なら、霞を飲むぞ?」
不意に放たれた、福の毒舌砲。
「⋯⋯黙って、福」
「ん?なんだ、その不遜な態度は」
そう。人間界ではなかったのだ。頭では理解しているはずなのに、情報を処理しきれていない。
だから⋯いとも簡単に、バグ(ミス)を犯すのだ。