海棠/カイドウ〜哀をなくした不遜な軍師と、愛しき共謀者が綴る備忘録〜
それから⋯、また男と語り始める。
「貴方は、なぜここに?」
今度は⋯男の方が問う。
「さっき言った通りです。フラフラしていたら、貴方と鸞の音色が聴こえて⋯」
「なぜ、外を歩いていたのですか?こんな夜更けに。怖いのではないですか?人間ならば、なおのこと」
「⋯⋯」
(核心を突いてくるなあ⋯)
「人間が天妖界にいる。その事実が⋯興味深いのです」
「汝自身を知れ、ですよ(※古代ギリシャの哲学者ソクラテス)」
「⋯⋯?」
「要するに⋯、自分が何を知り、何を知らないのか⋯自覚すらできていません。ここにいるのは偶然でしょうか、必然でしょうか?その答えを⋯誰なら知るのでしょう」
「⋯⋯⋯。苦難があるようですね。これもまた、縁でしょう。鸞が繋いだ幸運だと思えば気が楽になりませんか?」
「え?」
「貴方が知らないことは、私が教えましょう。その代わりに、人間界のことを教えて頂きたい。先程言った者が⋯そこへいる可能性もあるのです」
「⋯⋯⋯私が知っているのは、人間界でもごくごく小さい国の、ほんの一角のこと。役に立てるとは思えません」
「そうでしょうか?神は縁ある場所へ、人を還すといいます」
「⋯⋯ならば、ここも⋯?」
「貴方がいた世界と、何かが繋がっているのやも。少なくとも今日の出会いは、きっとそうでしょう」
「⋯⋯⋯」
「酒を酌み交わした友人として、力になります」
二人また盃を合わせて、月を眺める。
この世界で初めてできた、【友】と呼べる人。気恥ずかしくて、頼
もしくて、じんわりと心が温かくなった。