海棠/カイドウ〜哀をなくした不遜な軍師と、愛しき共謀者が綴る備忘録〜
「秦広王(しんこうおう)!!」

「わ、うわああ〜っ?!!!」

突如、私の目が開いた。
途端に、目の前には大きなまるっとしたかわいい瞳。

バッチっと視線がぶつかって、驚いたのであろう。その、大きな瞳をした小学生くらいの少年がのけ反るようにして⋯後方へと、尻もちをついて転んだ。

ひっくり返った器が少年の衣服を濡らして、ぽかんと口を開けこっちを見ている。

「オマエ⋯⋯これは希少な薬なんだぞ。オマエみたいな卑しい奴が口にできるものじゃない。ソレを無駄にするとは」

「⋯⋯⋯?」
(お前⋯?薬?⋯今なんて?卑しい奴って言った?)

尻もちついたまま、かわいい少年はその愛らしいルックスに似合わぬ毒舌で、一気に責め立てる。

初対面の知らない子に、こうも一方的にボロクソ言われるのは⋯さすがにいかがなものだろう。

私は寝転がってそちらを見たまま、思わず、眉をひそめた。

「あ。せっかく介抱してやったのに、今俺を睨んだな」

「⋯あの⋯」

「知らないからな。どんなことになっても」
「あの、待って。話を⋯」

「話なら、王に直接言え。今連れてくるから」

「⋯王?」
ではやはり、ここは⋯。


「⋯気の毒に。地獄行きだな」

少年はそう言い残して、わざと音を立てるようにして⋯バタバタと走り去っていく。

唖然として⋯その後ろ姿を暫し眺めていたけれど、気のせいであろうか?彼の後ろ姿、その頭のてっぺんに⋯2つの、ピンと尖った
「何か」が見えた気がした。

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