海棠/カイドウ〜哀をなくした不遜な軍師と、愛しき共謀者が綴る備忘録〜

第11話 少女の神算、有昧の盤上を奔る

目を隠されると、他の感覚が⋯研ぎ澄まされるものだ。

一瞬のうちに、土埃と⋯男たちの汗臭さが混じりあう、賑やかな場所へと⋯やって来た。

以前のような、精鋭達の訓練、という感じが⋯まるでしない。

耳に届くのは、群衆の足音。大勢がそこにいて、走っているのだろうか?不規則に乱れた音は、勢いと⋯活気を感じる。
すると⋯すぐ目の前で、ドタッ!!と何かが倒れるような音がした。

「海棠、もう外していいぞ」
福にそう促されて、私は何重にも巻かれた布を⋯くるくる、と外す。

すると⋯どうだ?

目の前に広がっていたのは、意外な⋯光景であった。


「これは⋯⋯」

それは⋯私が愛して止まないものと、とてもよく似たものであった。


男たちは、1つのボールのような物をひたすら追って⋯肉弾戦を繰り広げているではないか!
よくよく見ると、一応ボールは足で蹴るルールのようだが。手さえ使わなければ、タックル有りの、壮絶なアメフト状態。
転倒しても起き上がり⋯血を拭って再起する姿は不屈の魂さえ、感じる。

「一発レッド(カード)だ」
血が騒ぐ。

「福。⋯これは?」

「軍事訓練の一貫さ」

そう言う福の目が何故か、キラキラと⋯輝いている。

「⋯⋯あのボールは?」

「ぼうる?」

「肉まん作る時に使うようなボウルじゃなくて、【ボール】」

「ぼーる?」

興奮していて、うっかりしていた。ボールは万国共通では⋯ないらしい。

「あの⋯(たま)(きゅう)?⋯(まり)!あ。蹴鞠(けまり)?」

蹴鞠(しゅうきく)のことか?」

「⋯うん、それそれ」

「人間界で手に入る物だ」

「⋯⋯そっか。そうだ、サッカーの起源とも⋯言われてた」

「⋯⋯⋯?」

「福。あの蹴鞠(しゅうきく)は、どんな材料でできているのか知っているの?外側に張られている物に、中に入っている物」

「知らないけど⋯スキだ」

「⋯⋯⋯」

知らぬが仏、か。
鹿さん、ごめんなさい。

「福、随分嬉しそうだね」

「ウン。大好きなんだ、俺。こう、身体がワクワクしてウズウズして⋯」

なんとなーく⋯そうなる理由がわかる。そして私もまた、彼とそうそう変わらず⋯ウズウズとしているのだ。

「一緒にやらないの?」

「⋯⋯。吹き飛ばされるのは好きじゃない。でも、休憩中に借りて遊んだことはあるぞ」

「本当?」

私は、口角を上げて。
ニヤリ、と笑った。

「出番よ、福。今こそ肉なし肉まんを⋯!!」

「⋯⋯合点だっ!!」

我々は、意気投合し⋯拳と拳を突き合わせると。
福に倣って、休憩を促す呼びかけをするのであった。

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