海棠/カイドウ〜哀をなくした不遜な軍師と、愛しき共謀者が綴る備忘録〜
軍の食料の調達は、王自らも手配するそうで⋯、それに漏れず、この差し入れは皆、王の施しと捉えていた。
肉まんもどきを受け取りながら、彼らは王への謝意を伝えている。この工程に彼は関わっていないのに⋯若干複雑であった。
「天妖界全土に跨ぐ仕事をしているのに、こういう細かいことまでしてたんだ⋯。あの人、寝ている暇なんてないのでは?」
「確かに⋯見たことはない」
さらりと、福は答えた。
「寝なくて大丈夫なの?」
「⋯⋯。寝ない者もいれば、寝る者もいる」
なるほど。確かに王も言っていた。
彼はその前者かもしれなくて⋯、福は、紛うことなき後者。
「人間は、不眠は⋯早死に繋がる」
「お前は寝過ぎだったけどな。それに、言っても俺らの寿命は⋯比べものにならないくらい長いから」
「⋯⋯⋯」
妖族の価値観たるや⋯人間には理解不能である。
「それより、海棠。⋯そろそろ⋯」
「うん。⋯⋯久しぶりに⋯やりますか!」
福はすぐさま、軍の偉い人?の元へ行き、ボールを手にすると⋯。
力いっぱいに遠くへポーンと投げつけて、それを自ら走って⋯取りに行ったのだった。
「⋯⋯ん?」
不思議に思いつつも、しばらくその様子を眺める。
するとどうだ?
また、ポーンとして⋯
てけてけっと走って取りに行き、またポーーンとして⋯。
「⋯⋯本能なのね」
爽やかないい笑顔。
私は彼がボールを持って戻って来るタイミングで、「福っ!!」と大きな声で名前を呼ぶ。
ピク、と動きを止めて。福はじい〜⋯と、穴が開くほどに私の顔を見つめてきた。
「福。私にも、ちょうだい」
するとどうだ。
今度はボールを持って離れて行くと⋯、私にめがけて、弓なりの、高い配球で投げてよこした。
正確な、パスだ。
私は胸でトラップし、勢いを殺すと⋯それをインサイドで受けて、ポンッと真上へと上げる。
「⋯重っ!」
なんて言いながら、次からは足の甲に当てて⋯リフティングをしていく。
ボールの芯をしっかりと捉えれば、横槍さえはいらなければ⋯延々と続けることができる。
⋯⋯はずだった。
ボールの行方と共に、首を上下させて見ていた福が、突如ヘディングして⋯奪っていったからだ。
「お前⋯上手いな。上手いけど、独り占めは狡いだろう?俺もする!!」
そんなこんなで⋯やっとまともにキャッチボール的な遊びに移行した所で。
兵士達の休憩が、終わってしまった。
戻って来るその男達のホクホクとした顔つき!美味であった、と感銘を受けたその言葉。まさに⋯至福の喜びであった。