海棠/カイドウ〜哀をなくした不遜な軍師と、愛しき共謀者が綴る備忘録〜
「秦広王!!」
「わ、うわああ〜っ?!!!」
突如、私の目が開いた。
途端に、目の前には大きなまるっとしたかわいい瞳。
バッチっと視線がぶつかって、驚いたのであろう。その、大きな瞳をした小学生くらいの少年がのけ反るようにして⋯後方へと、尻もちをついて転んだ。
ひっくり返った器が少年の衣服を濡らして、ぽかんと口を開けこっちを見ている。
「オマエ⋯⋯これは希少な薬なんだぞ。オマエみたいな卑しい奴が口にできるものじゃない。ソレを無駄にするとは」
「⋯⋯⋯?」
(お前⋯?薬?⋯今なんて?卑しい奴って言った?)
尻もちついたまま、かわいい少年はその愛らしいルックスに似合わぬ毒舌で、一気に責め立てる。
初対面の知らない子に、こうも一方的にボロクソ言われるのは⋯さすがにいかがなものだろう。
私は寝転がってそちらを見たまま、思わず、眉をひそめた。
「あ。せっかく介抱してやったのに、今俺を睨んだな」
「⋯あの⋯」
「知らないからな。どんなことになっても」
「あの、待って。話を⋯」
「話なら、国公に直接言え。今連れてくるから」
「⋯⋯?」
「⋯気の毒に。地獄行きだな」
少年はそう言い残して、わざと音を立てるようにして⋯バタバタと走り去っていく。
唖然として⋯その後ろ姿を暫し眺めていたけれど、気のせいであろうか?彼の後ろ姿、その頭のてっぺんに⋯2つの、ピンと尖った「何か」が見えた気がした。
どれだけ寝ていたのだろう。体のあちこちが軋むような痛さ。
一旦大きく伸びをして。
私はようやく⋯我に返った。
「地獄行き、だって?」
小学生男児特有の、悔し紛れの一撃って感じの物言い。
「⋯う〜ん。⋯かわいいな」
思わずくスッと笑ってしまった。
けれど、その笑いもすぐに宙に浮いてしまう。
寝そべっているこの場所、ゴツゴツとしていて、腰が痛い。
それもそのはず、なにせ⋯どう見たって、むき出しになっている【岩】だ。
私がいるこの場所は、薄暗い洞窟。
岩壁にある松明の炎が⋯ぼんやりと辺りを照らしていた。
人生生まれてこの方、洞窟などに入ったことなどない。どこにあるのかも知らない。
いや。鍾乳洞を見たくて、1度調べたことはあるから全く無知ではないけれど。
それにしても⋯今にも、どこからかコウモリでも飛んできそうな雰囲気だ。
「⋯夢⋯?それとも、現実?」
はたまた、地獄か、死後の世界なのか?
胸が、ザワザワと音を立てる。
少年が去った、洞窟の入り口をじいっと見て。彼が口にした、訪れるのであろう次の訪問者を⋯ひたすら待った。
入口はただひとつ。先のない行き止まりの洞窟。
もはや、逃げも隠れもできそうにもない。
ゴクリと唾を飲み込んで、覚悟を決める。
ひゅうっと風が渦を巻くようにして⋯入り口から飛来して来ると。
その冷たさに、背筋が凍るような恐ろしさを感じた。
「わ、うわああ〜っ?!!!」
突如、私の目が開いた。
途端に、目の前には大きなまるっとしたかわいい瞳。
バッチっと視線がぶつかって、驚いたのであろう。その、大きな瞳をした小学生くらいの少年がのけ反るようにして⋯後方へと、尻もちをついて転んだ。
ひっくり返った器が少年の衣服を濡らして、ぽかんと口を開けこっちを見ている。
「オマエ⋯⋯これは希少な薬なんだぞ。オマエみたいな卑しい奴が口にできるものじゃない。ソレを無駄にするとは」
「⋯⋯⋯?」
(お前⋯?薬?⋯今なんて?卑しい奴って言った?)
尻もちついたまま、かわいい少年はその愛らしいルックスに似合わぬ毒舌で、一気に責め立てる。
初対面の知らない子に、こうも一方的にボロクソ言われるのは⋯さすがにいかがなものだろう。
私は寝転がってそちらを見たまま、思わず、眉をひそめた。
「あ。せっかく介抱してやったのに、今俺を睨んだな」
「⋯あの⋯」
「知らないからな。どんなことになっても」
「あの、待って。話を⋯」
「話なら、国公に直接言え。今連れてくるから」
「⋯⋯?」
「⋯気の毒に。地獄行きだな」
少年はそう言い残して、わざと音を立てるようにして⋯バタバタと走り去っていく。
唖然として⋯その後ろ姿を暫し眺めていたけれど、気のせいであろうか?彼の後ろ姿、その頭のてっぺんに⋯2つの、ピンと尖った「何か」が見えた気がした。
どれだけ寝ていたのだろう。体のあちこちが軋むような痛さ。
一旦大きく伸びをして。
私はようやく⋯我に返った。
「地獄行き、だって?」
小学生男児特有の、悔し紛れの一撃って感じの物言い。
「⋯う〜ん。⋯かわいいな」
思わずくスッと笑ってしまった。
けれど、その笑いもすぐに宙に浮いてしまう。
寝そべっているこの場所、ゴツゴツとしていて、腰が痛い。
それもそのはず、なにせ⋯どう見たって、むき出しになっている【岩】だ。
私がいるこの場所は、薄暗い洞窟。
岩壁にある松明の炎が⋯ぼんやりと辺りを照らしていた。
人生生まれてこの方、洞窟などに入ったことなどない。どこにあるのかも知らない。
いや。鍾乳洞を見たくて、1度調べたことはあるから全く無知ではないけれど。
それにしても⋯今にも、どこからかコウモリでも飛んできそうな雰囲気だ。
「⋯夢⋯?それとも、現実?」
はたまた、地獄か、死後の世界なのか?
胸が、ザワザワと音を立てる。
少年が去った、洞窟の入り口をじいっと見て。彼が口にした、訪れるのであろう次の訪問者を⋯ひたすら待った。
入口はただひとつ。先のない行き止まりの洞窟。
もはや、逃げも隠れもできそうにもない。
ゴクリと唾を飲み込んで、覚悟を決める。
ひゅうっと風が渦を巻くようにして⋯入り口から飛来して来ると。
その冷たさに、背筋が凍るような恐ろしさを感じた。