海棠/カイドウ〜哀をなくした不遜な軍師と、愛しき共謀者が綴る備忘録〜
「鳥男だったのか」
「昨日は手荒い扱いをし、大変申し訳ない。人を乗せることは慣れてないゆえ⋯」
この男は⋯ずっと見ていたのだろうか?
私の邪魔をしに来たのか、それとも中和すべく⋯姿を現したのか。
いずれにせよ⋯図ったかのようなこのタイミング。
「⋯⋯福は?」
「 狡殿はまだ目覚めず、先に鐘山の地で休んでおられる」
「【福】の話をしているのです」
「それは⋯失礼しました。福殿は、鐘山にて貴方がたを待っている」
「⋯⋯⋯」
彼の右と左から、蛇がシャー⋯ッと威嚇の音をあげる。
―が、私の一歩前に。
有昧王が私を背に隠すようにして前へと出てくると。
その蛇たちは、スッと頭だけを主の衣の中へと引っ込めて⋯出て来なくなった。
「用があるのなら、なぜ直接尋ねて来ない?」
王が、低く唸るような声色で、問い質す。
「有昧伯。こうでもせねば⋯、貴殿は会っても下さらぬでしょう」
「人間の女を使おうなどとは―⋯一体誰の考えだ?」
「価値ある者でなければ、動かないことを⋯ご自身もよくわかっておられる筈です」
王の広い背中に隠れるようにして、この攻防戦の行方をわくわくしながら⋯聞き入る。
やはり2人は知り合いで、なおかつ―⋯有昧王のことをよく理解している者に違いない。
対等な関係、いや、有昧王の方が⋯少し偉そうにも聞こえる。そうでなければ、あの蛇たちだって恐れたりしないはず。私への態度とは大違いである。
私は、王の背中⋯その衣をつん、と引っ張って。
彼にしか届かぬほどの小声で―⋯尋ねる。
「この人⋯いや、鳥?鯨⋯の旦那は、敵?それとも、味方?」
「敵でも、味方でもない。北海の海を司る神であり、また、空を司る神でもある」
「⋯⋯⋯」
神!!!!
ここに来て、神という存在に―⋯初めて会った。
それは⋯想像しているような白髪の老人、でもなく。後光が差すような眩しさを放つ訳でもない。
既に出会った、妙な妖怪?たちと同様に⋯とても不思議な風貌で。
でも、化身のスケールこそ、まさに神級の⋯壮大さだ。
「因みに、名前は―⋯」
「愚強」
「後に書き留めたいので、ここにその文字を書いてください」
「⋯⋯⋯」
彼が宙に書いた達筆の『愚強』の文字が。
まるでアニメーションで敵役が初登場するかの如く―⋯神のすぐ側にドン!と現れて⋯。
その非現実的なリアルに、思わず吹き出してしまいそうになった。
まさに強そうな⋯名前だ。
けれども、この男が神であると言うのなら。
私がこれまで見せてしまった不敬な態度は―⋯命取りになるのではないだろうか?
「昨日は手荒い扱いをし、大変申し訳ない。人を乗せることは慣れてないゆえ⋯」
この男は⋯ずっと見ていたのだろうか?
私の邪魔をしに来たのか、それとも中和すべく⋯姿を現したのか。
いずれにせよ⋯図ったかのようなこのタイミング。
「⋯⋯福は?」
「 狡殿はまだ目覚めず、先に鐘山の地で休んでおられる」
「【福】の話をしているのです」
「それは⋯失礼しました。福殿は、鐘山にて貴方がたを待っている」
「⋯⋯⋯」
彼の右と左から、蛇がシャー⋯ッと威嚇の音をあげる。
―が、私の一歩前に。
有昧王が私を背に隠すようにして前へと出てくると。
その蛇たちは、スッと頭だけを主の衣の中へと引っ込めて⋯出て来なくなった。
「用があるのなら、なぜ直接尋ねて来ない?」
王が、低く唸るような声色で、問い質す。
「有昧伯。こうでもせねば⋯、貴殿は会っても下さらぬでしょう」
「人間の女を使おうなどとは―⋯一体誰の考えだ?」
「価値ある者でなければ、動かないことを⋯ご自身もよくわかっておられる筈です」
王の広い背中に隠れるようにして、この攻防戦の行方をわくわくしながら⋯聞き入る。
やはり2人は知り合いで、なおかつ―⋯有昧王のことをよく理解している者に違いない。
対等な関係、いや、有昧王の方が⋯少し偉そうにも聞こえる。そうでなければ、あの蛇たちだって恐れたりしないはず。私への態度とは大違いである。
私は、王の背中⋯その衣をつん、と引っ張って。
彼にしか届かぬほどの小声で―⋯尋ねる。
「この人⋯いや、鳥?鯨⋯の旦那は、敵?それとも、味方?」
「敵でも、味方でもない。北海の海を司る神であり、また、空を司る神でもある」
「⋯⋯⋯」
神!!!!
ここに来て、神という存在に―⋯初めて会った。
それは⋯想像しているような白髪の老人、でもなく。後光が差すような眩しさを放つ訳でもない。
既に出会った、妙な妖怪?たちと同様に⋯とても不思議な風貌で。
でも、化身のスケールこそ、まさに神級の⋯壮大さだ。
「因みに、名前は―⋯」
「愚強」
「後に書き留めたいので、ここにその文字を書いてください」
「⋯⋯⋯」
彼が宙に書いた達筆の『愚強』の文字が。
まるでアニメーションで敵役が初登場するかの如く―⋯神のすぐ側にドン!と現れて⋯。
その非現実的なリアルに、思わず吹き出してしまいそうになった。
まさに強そうな⋯名前だ。
けれども、この男が神であると言うのなら。
私がこれまで見せてしまった不敬な態度は―⋯命取りになるのではないだろうか?