一夜だけの恋も、重い愛もいりません。〜添乗員しづの恋
 大手旅行会社の中国支店で添乗員やるのがそんなに偉いの?
 
 そう言いたいのを我慢して、営業スマイルで名刺を差し出した。

「あぁ、派遣添乗員ね。使い捨ての。それでも名刺を持ってるんだ? 」
 
 ATB添乗員の男は、私の名刺を受けとると、無造作に胸ポケットに仕舞って、それからは私を無視した。
 この男の標的は、岡田だけのようだ。
 
「お前みたいに仕事出来る奴が何でリストラされたんだって、あの時は同期で超盛り上がったんだよ!」

 更にお腹を揺らして岡田に詰め寄る。

「な、お前、何やったんだ? 裏で顧客の情報でも流してたのか?」

 ATB添乗員は、周りが振り返るほどの高笑いを混ぜて喋った。
 
 何で、今、リストラの話?
 
 しかも、お客様や現仕事仲間の私がいるのに、信用を無くすような事まで。
 
「ちょっと……あなた。失礼ではありませんか?」
 
「あ?」
 
 再び口を挟んできた私に、男は、邪険一色の視線を向ける。
 
「関係ない派遣の人間はすっこんでろ」
 
 
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